産後ケア


当院では妊娠希望でのなかなか授からない「鍼灸不妊治療」から、妊娠初期の「つわり鍼」、妊娠中のケア、妊娠後期の「逆子の灸」とトータルなサポートケアを行っています。そして、出産後の母親の「骨盤調整」や乳幼児の夜泣きの「小児はり」など産後ケアも大切だと考えています。


産後の骨盤調整


骨盤調整
経膣分娩はもちろん、帝王切開でもホルモンの関係上、骨盤は広がります。元々、骨盤が歪んでいる人では、骨盤の広がり方が左右で違います。産後に時間とともに歪んだまま骨盤が固まると、産後腰痛・産後太りなどになります。骨盤調整をすることで産後腰痛・産後太りを防ぐことにもなり、骨盤が整うことで、ホルモンバランスの回復も早くなるので『すぐにでももう一人産みたい』という方にもオススメです。

1骨盤の構造
骨盤は大腿骨と脊柱の間で体を支える強固に一体化した骨群です。骨盤は左右1対の寛骨(かんこつ)・仙骨(仙骨)・尾骨(びこつ)で構成されています。これらの骨はいずれも成長とともに癒合します。寛骨は腸骨(ちょうこつ)・坐骨(ざこつ)・恥骨(ちこつ)が一体化して1個の寛骨となります。仙骨は5個の仙椎が癒合して1個の仙骨になります。尾骨は3~6個の尾椎が癒合して尾骨となります。

骨盤が広がる!?
生理前や妊娠3ヶ月を過ぎると「リラキシン」というホルモンが分泌されます。リラキシンは卵巣・子宮・胎盤などから分泌される女性ホルモンのひとつです。妊娠中に分泌量が増え、関節や靭帯を緩める作用があります。リラキシンにより骨盤の仙腸関節靭帯(せんちょうかんせつじんたい)や恥骨結合など関節や靭帯が緩まり、分娩時に胎児が産道をスムーズに通り抜けられるのです。リラキシンが分泌されるのは、赤ちゃんを出産するためになくてはならない仕組みです。

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産後腰痛
妊婦の仙腸関節は可動性が増大することが知られており、妊娠中から出産後4~6ヶ月も続きます。これはリラキシンの影響が考えられています。リラキシンの増加が靭帯を弛緩させることで、関節が自由に運動するようになり、結果として骨盤直径が増大します。仙尾骨関節や恥骨結合の弛緩もあわせると10~15%も増大するとされています。
恥骨結合は骨盤前面の正中線において両側の恥骨結合面がうすい硝子軟骨に被われて近づき、その両者の間を線維軟骨性恥骨間円板が連結します。臨月頃には恥骨結合が緩み、その周囲の筋肉・靭帯や関節に、これまでかかっていなかった負荷がかかるようになります。腸骨のねじれにより恥骨結合が引っ張られたり圧力が加わることで、軟骨が損傷したり離開して痛みを感じるようになり恥骨痛を訴えます。また、お腹が大きくなり恥骨上部に付いた腹直筋が引っ張られ恥骨上部に痛みを訴える方がいます。産後の恥骨痛は厄介です。恥骨結合はクランク運動をします。そして硝子軟骨ですからガラス状です。授乳後、赤ちゃんをゲップさせようと立ち上がって背中をトントンすることさえ、痛くてたまりません。恥骨痛は骨盤調整しても痛みがなくなるまで3週間はかかります。
care97.jpgさらに胎児が成長してお腹が大きくなると、母体にかかる負担もさらに大きくなってきます。お腹が大きくなることで姿勢変化も起こります。この姿勢変化が母体にとって負担となります。お腹が大きくなると重心が前方に移り、腰椎が前に反り骨盤も前方に傾きます。腰椎や骨盤の関節にかかる負担が大きくなるにも関わらず、日頃の運動不足も加味され筋力低下して腰痛を訴えます。妊娠中~産後の腰痛として「仙腸関節痛」を訴える人が多いです。仙骨はクサビのように腸骨に食い込んだ形をしています。本来は、それほど可能性はありませんが、リラキシンの影響で可動性が増します。このような仙腸関節障害は決して稀ではありません。一般的に出産後の腰痛に仙腸関節障害が多いといわれますが、老若男女を問わず腰痛の原因となります。

骨盤調整の方法
①診断
まず、骨盤の状態を観察します。左腸骨が引き上げられていたり、慣れない授乳などで全身が緊張して代償的にどちらかの腸骨が引き上げられていたりいます。これは左右の足の長さにも影響として仮性延長として診られます。また、広がったままの腸骨の上前腸骨棘(じょうぜん ちょうこつきょく)が外下方に開いています。さらに、仙腸関節が大きく動き過ぎて、仙骨が反り返り、仰向けに寝ると尾骨が当たって眠れないという人もいます。
そして、うつ伏せになると、どちらかの仙腸関節部を押圧すると圧痛を訴えます。そちらの仙腸関節に問題があることが多いです。また、妊娠中はお腹も大きくなるので腹筋も伸ばされます。緩んだ腹筋を補うために、背中の筋肉(脊柱起立筋)が過緊張して体を支えています。
②ほぐす
骨盤には上半身・下半身の大きな筋肉が付いています。まず、全身の体幹の筋肉を徒手で緩めていきます。
仰向けで股関節の可動領域を確認します。そして、大腿の裏側の筋肉(ハムストリングス)と内側(内転筋など)を緩めていきます。うつ伏せになると、お尻の筋肉(殿筋)やハムストリングスを緩めます。そして、大腿の前側の筋肉(大腿四頭筋)をストレッチします。次いで、過緊張した脊柱起立筋を緩めていきます。筋力低下や代償的に緊張していた体幹の筋肉を緩めることで、本来の骨盤の状態が把握できます。
③調整
当院では仙腸関節痛による産後腰痛や骨盤の歪みを調整する方法として、関節運動学的アプローチであるAKA(エーケーエー:Arthrokinematic Approach)を採用しています。関節運動学に基づき、関節の遊び、関節面の滑り・回転・回旋などの関節包内運動の異常を治療する方法です。徒手的に仙腸関節の適合を正していく方法です。このAKAは無痛で仙腸関節を正常な位置に調整できます。カイロプラクティックのような関節をボキッと動かす手法ではありません。
まずは、産後1ケ月はしっかり体を休めましょう。骨盤調整は関節や靭帯を緩めるリラキシンは出産後4~6ヶ月続きますから、半年以内に始めるのが標準的です。『直ぐにでも第二子が欲しい』という場合も、骨盤調整により骨盤内の血流が良くなり速やかに授乳中でも月経が再開されます。
④骨盤ゴムベルト
骨盤を正しい位置に調整しても、骨盤には多くの筋肉が付着するので、生活習慣や癖で元に戻ってしまいます。そこで、お料理や洗濯物を干したり立っている時と、買い物や散歩などで歩いたりする時にだけ骨盤ゴムベルトを巻いてもらいます。リビングなどでリラックスしている時には巻きません。
骨盤ゴムベルトは、仙腸関節の微小な不適合の発生を抑える効果があり、仕事復帰時などの再発予防にも使えます。腰痛を一時的にでも緩和したという方にもオススメです。
皆さんお茶を淹れて飲みますよね。買ってきた茶葉は茶壺に入れます。その時ザ~ッと入れてからトントンしませんか!? トントンすると茶葉が沈んでもう少し入る空間ができます。基本的にはこの現象が骨盤でも起ります。骨盤ゴムベルトでホールドして歩いたりすることで、微妙にずれている仙腸関節が元の正しい位置に戻って固定されます。
骨盤ゴムベルトは上前腸骨棘と恥骨の間に巻きます。気を付けの姿勢で手首のあたりに出っ張った骨に触れます。これは大腿骨の大転子です。これに骨盤ゴムベルトの下縁が来るように巻くのがポイントです。
骨盤ゴムベルトは生ゴムの素材のものがホールド力も強いのでオススメです。骨盤ゴムベルトがなければ、とこちゃんベルトでも古いストッキングでも可です。
骨盤ベルトの巻き方や巻く位置を間違うと、逆に骨盤を広げてしまう場合があります。産後に『骨盤ベルトを巻いていたけれども、出産前のパンツがはけない』や、『出産前の体重に後2~3kg戻らない』、『体重は戻ったけれど体形が変わった』、『お尻と太腿が大きくなった』という方は、骨盤ベルトの巻き方を間違えている可能性があります。育児雑誌の聞きかじりで間違ったところに巻いている人がいます。ウェスト付近の骨盤の上の部分に巻くとかえって骨盤はハの字に開いてしまいます。産後にお尻と太腿が太ってしまった方は、妊娠前に履いていたパンツは入らなくなります。

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