妊娠・不妊症に関する用語説明


卵子
女性は胎児(妊娠20週頃)には卵巣に約600万個の卵子の元となる幹細胞の原始卵胞(卵祖細胞)があります。そして出生前には約40万個の「1次卵母細胞」になり存在します。1次卵母細胞はすでに幹細胞ではないのでこれ以上増えることはありません。そして出生後に休眠状態に入ります。1次卵母細胞は思春期の初潮とともに数個づつ起こされて卵子になる準備をします。卵子は新しく作られず、多くが退縮し減少し続けます。生涯でわずか400個程度の卵胞だけが排卵前段階へ到達するのです。卵子は生まれてから減ることはあっても増えることはありません。
1回の排卵で1個排卵されますが、その卵子が生育過程で多くの卵子になる可能性がある1000個単位の原始卵胞が目覚め、排卵の周期にはその中の約20個が選ばれ最終的に成熟します。しかし排卵されるのはたった1個の「主席卵胞」だけです。残りはすべて退縮し消滅してしまいます。卵子の減るスピードは遺伝的なものや過去の骨盤内の感染や手術、子宮内膜症、喫煙などの生活習慣、また化学療法や放射線療法などの影響で、卵子の減るスピードは速くなります。つまり年齢の割には多くの卵子が残っているケースもあれば、反対に年齢の割には早く減っている場合もある訳です。

排卵
10~12mmに成長した成熟卵胞(グラーフ卵胞)が約20~22mmになると脳の下垂体から「黄体形成ホルモン:LH」が多く分泌され排卵となります。排卵し受精するのに最適な卵胞の大きさ20~22mmほどです。卵子自体の大きさは0.2mmほどです。一般的に20~22mmになると約36時間後に排卵が起こります。この時は黄体形成ホルモン(LH)が脳の下垂体から分泌されます。この辺は個体差があるので個体によって違います。排卵された卵子の受精能力は12~24時間です。 排卵される卵子は決して1個だけ発育する訳ではありません。月経周期に合わせて同時に15~20個の卵胞が成長し始めます。しかし、淘汰された結果として1個の卵子だけが排卵されます。最近の研究では卵胞の卵子が1個に選ばれて大きくなるのは、たまたまタイミングの合った偶然の産物で選ばれたものということも分かってきています。受精卵1個あたりで平均すると赤ちゃんまで成長できる確率は約5%と報告されています。
退化し減少する卵胞を「閉鎖卵胞」といいます。脳の下垂体から分泌される卵胞刺激ホルモン(FSH)は1個の卵子を成熟させるだけの分量のホルモンしか分泌しません。不妊治療で用いる排卵誘発剤は、本来は淘汰され退化するはずの卵子をヒト閉経期尿性ゴナドトロピン(hMG)などを注射して育てるのです。
そして、卵子は加齢と共に数も質も低下していくと考えられています。卵子となる1時卵母細胞は生後に休眠し思春期に入り徐々に数個づつ目覚め排卵が始まります。つまり20歳で排卵する卵子は20歳です。40歳で排卵するのは40年物となります。加齢により卵子は減少する上に化学物質や放射線などの様々な影響で傷付き劣化します。自然妊娠率は30歳を過ぎると低下し始め、40歳中期頃には妊孕力を失います。妊娠率の低下は排卵される卵子の質の低下による妊娠率の低下と流産率増加が原因とされています。ですから高齢出産では妊娠しにくく、ダウン症などの先天異常も起こりやすいのです。


精子
男性は精巣に「精祖細胞」という幹細胞があり、精子を日々生み出すことが可能です。精祖細胞は分裂して一時精母細胞→ニ時精母細胞になります。ここで精子は受精に備えて減数分裂して染色体を半減させます。精子細胞はこれ以上は分裂せず変形しながら精子へと成熟していきます。精祖細胞から精子になるまで約74日です。
精子はおたまじゃくしのような形です。おたまじゃくしの頭の部分はDNAが入った核であり、それに尾が付いたような形です。精子は全長0.06mm。卵子自体の大きさは0.2㎜ほどです。卵子の大きさに対し精子は小さいので、多くの精子が必要です。受精にまでたどり着くにも激しい競争があります。
1日に精巣で作られる精子の数は約3千万~2億個です。精巣で作られた精子は精巣上体(副睾丸)輸送され、最大10億個程の精子が貯蔵され成熟します。そして、直径約3mm、長さ約400mmの細長い管である精管を通り尿道まで輸送されます。膀胱の後方には前立腺がありますが、その前の部分に精管膨大部という膨らみがあります。精管は射精直前には蠕動運動をして精子を精管膨大部まで効率よく運搬します。そして精管膨大部と精嚢が合流し射精管となります。精嚢には果糖などを含むアルカリ性の淡黄色の粘液が分泌され精嚢液として溜められています。そして、射精管は前立腺の内部を貫き、前立腺の内壁にある精丘と呼ばれる部分に開口して尿道へ通じます。
精子濃度は1ml中の精子数で2000万個以上が正常とされています。自然妊娠可能な精子数は1ml中、約5000万個で運動率50%以上。理想では1ml中8000万個以上で運動率80%が望ましいとされています。精子濃度(1mlの精子数)が2000万個未満の場合は乏精子症、精液中に精子がまったく見当たらない場合は無精子症、直線運動している精子が少ない場合は精子無力症と診断されます。症状に応じて精巣内精子採取法(TESE)、顕微鏡下精巣上体精子採取法(MESA)、経皮的精巣上体精子採取法(PESA)などは直接精巣に針を刺して採精する精子回収法を行います。


射精
射精時には精管膨大部から放出された精子と精嚢液の混合物が放出されます。実は粘度のある精液全体の約70%は精嚢液です。精液中の精子は1%しかないという説もあります。多くの精嚢液が精子に運動のエネルギーを与えているのです。精液の独特な臭いは精嚢液の臭いです。
射精1回あたりの精液が含む精子数は個人差や体調の関係もありますが通常1億~4億個とされています。射精された精子は子宮や卵管内で精子に蓄えられているエネルギーにより約24~28時間程度だけ受精能力があります。卵子は排卵後12~24時間が受精可能です。
精子は精巣内で毎日作られ、いつでの射精が出来るように蓄えられていますが、精子は毎日放出すると薄くなります。また溜め過ぎると老化するとされています。一般的には3~5日で放出される精子が運動率も高いとされているので、タイミング法などでの禁欲期間も3~5日となります。排卵周辺で2~3回タイミング法を取る人もいらっしゃるかもしれませんが、産婦人科医がいうには複数回行っても単回でも結果は同じだそうです。

受精
1個の精子が卵子の周りにある「透明帯」を通り抜けて受精が始まります。卵子は多精拒否の機能が作動し他の精子の侵入を防御します。そして両者の核が融合して受精卵となります。受精は子宮ではなく卵子と精子は卵管膨大部で行われます。卵子は排卵後12~24時間、精子は射精後24~28時間の間だけ受精能力があります。
受精卵は直ぐに卵割を開始し約3日かけて16分割された「桑実胚」となって卵管を通過します。子宮に到着した桑実胚は分裂を続け、約5日後には胚内に腔が出現した「胚盤胞」になります。子宮内膜に付着する前に胚盤胞の透明帯が溶かさます。胚盤胞は将来胎児となる「内細胞塊」と、後に胎盤になる「栄養膜細胞」に区別されるようになります。7日目までは子宮の内側の体液に浮かんでいます。
卵巣と卵管は直接つながっていません。排卵された卵子は卵管の先端部分のイソギンチャクのような部分である卵管采(らんかんさい)で卵巣から排出された卵子を吸い上げ(キャッチアップ)して卵管に送ります。うまくキャッチアップされないので卵子が卵管に入れません。これをキャッチアップ障害といい不妊症のひとつの原因ですが検査方法がありません。また、卵巣と卵管は直接つながっていませんから、受精卵が子宮に向かわず、その間隙から出てしまうのが子宮外妊娠です。

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