排卵障害


排卵障害
排卵障害とは、卵子が育たない、または育っても排卵できない状態を指します。不妊症の原因のひとつと考えられています。
脳内に原因がある場合
①視床下部性(ストレス)やピルの服用。
②下垂体性(下垂体腫瘍)や大出血による下垂体の異常などが考えられます。
卵巣に原因がある場合
①早発卵巣不全(POF)は40歳未満で月経が止まる早発閉経です。
②多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)は若年で排卵障害が強い方にみられます。ホルモン異常で卵子が成熟できず、月経が2~3ヶ月に1回となり、その結果、卵巣の表皮が厚くなり増々に排卵しにくくなります。
③早期卵巣機能廃絶症は卵子が成熟せず早い段階で無くなり排卵しなくなる障害です。
④卵巣過剰刺激症候群(OHSS)は排卵誘発剤による副作用で過剰な排卵が起こります。この現象が多胎の原因となり時にOHSSの原因となります。通常、親指位の卵巣が5~6倍に腫れ腹水がたまることや流産する可能性もあります。最近はhMG製剤の改善や超音波検査でOHSSが解り、対策が早く取れるようになっています。


無排卵
無排卵とは、出血はあるものの排卵が認められない月経のことです。正常な場合、基礎体温が排卵までは低温期、その後に排卵があり高温期になります。排卵がない場合は、基礎体温がずっと低温の状態が続きます。
基礎体温を測っていなくても、『生理がきても出血が少ない、または異常に多い』『生理周期が40日以上、または25日より短く、終わったらすぐにくる』『10日以上もだらだらと生理が続く』『以前は生理痛がひどく、だるかったのが最近何ともなくなった』。このような症状が続くようでしたら要注意です。
無排卵の原因は過度のストレス、疲労、過激なダイエット、睡眠不足などで、ホルモンバランスが乱れたり、卵巣機能の低下が原因で卵巣機能不全になっている可能性があります。不妊症や無月経などの原因になるほか、更年期以降の子宮がんの発生率も高くなるとされています。治療を受ける必要はあります。 レディースクリニックでは、まず排卵誘発剤を使い排卵をスムーズにさせます。効果が出るまでの期間には個人差があります。

黄体機能不全
黄体機能不全とは妊娠するための身体の準備が整っていない状態です。高温期はプロゲステロン(黄体ホルモン)の働きであり、妊娠維持などの働きもあります。排卵後に残された卵胞が黄体化してプロゲステロンが分泌されるようになります。プロゲステロンは子宮内膜の状態を厚くして受精卵が着床しやすい状態にします。黄体機能不全はプロゲステロンが少ない状態です。子宮内膜が薄ければ着床しにくく、高温期が短かったりします。また、高温期と低温期の温度差がないと卵胞が成熟せず排卵障害・不妊症の原因になります。

多嚢胞性卵巣症候群:PCOS
多嚢胞性卵巣症候群(PolyCystic Ovarian Syndrome:PCOS)は、通称「ピーコス」と呼ばれる代表的な不妊原因です。卵巣の中に卵胞がいくつもできて、排卵障害を引き起こす病態です。生理のある女性の約6~8%にみられるとされています。無月経(薬を用いないと生理がこない)、月経周期が39日~3か月の稀発月経、排卵を伴わない無排卵月経(無排卵周期症)のいずれかの月経異常があります。
PCOSの特徴は卵巣の多嚢胞性変化、無排卵月経あるいは無月経、肥満、男性化(多毛、低声音)、卵巣白膜に肥厚、FSHに対してLHが高値を示します。
OHSSになりやすい体質にPCOSがあります。PCOSでは卵巣に5~8ミリ程度の多数の卵胞がネックレス状に並んでいる場合は、特に発症しやすいことが知られています。PCOSでhMG-hCG療法を行なうと20~30個、時にはそれ以上の卵胞が発育してしまい、卵巣がこぶし大以上に腫大してしまう場合もあります。 
PCOSの傾向がある人や卵子ができにくい場合、排卵誘発剤のクロミフェンの代わりに乳がんの治療薬でエストロゲンを抑えるレトロゾール(アロマターゼ阻害剤)を投与する場合もあります。エストロゲンの分泌が減ることで、下垂体は卵子をつくる命令を出します。その作用を利用した薬剤です。卵子の質を改善すれば着床率や妊娠率も上がります。

ホルモン検査
基礎体温・経膣超音波検査・子宮卵管造影検査・頸管粘液検査・フーナーテスト・精液検査などの基本検査である程度の不妊原因はわかりますが、その基本検査で何らかの異常が認めたり、不妊治療期間が長期におよんだ場合、患者個人に合わせた検査が必要になることがあります。
基本検査により排卵障害が認められた場合、各種のホルモン検査が必要になります。例えば、卵巣を刺激し卵胞の発育と排卵を促すには、脳からの各種ホルモンの分泌がなければなりません。また、分泌されたとしても分泌量や時期が適当でないと、結果として排卵障害につながることがあります。

①性腺刺激ホルモン
卵胞刺激ホルモン(FSH)、黄体化ホルモン(LH)を調べます。検査段階においては、月経周期の早い時期(卵胞期初期)にホルモン値を調べることが望ましいとされているので、場合によっては受診してすぐに検査の場合もあります。
LH検査は尿中のLHの変化を見て排卵日を予測する検査です。自宅で手軽にできる方法です。排卵日を予測することで的確な性交のタイミングを知ることができます。

②卵巣性ホルモン
卵胞ホルモン(エストロゲン)、黄体ホルモン(プロゲステロン)検査します。GnRH検査は性腺刺激ホルモン・放出ホルモン(GnRH)を投与して、卵胞刺激ホルモンと黄体化ホルモンを測定し、それぞれのホルモンが正常に分泌されるかを検査します。
③乳腺刺激ホルモン
乳腺刺激ホルモン(プロラクチン)の分泌異常があると、月経の異常や排卵障害が起こります。本来このホルモンは授乳しているときに分泌されますが、何らかの障害で妊娠前の女性に過度に分泌されると月経不順や排卵障害の原因につながります。
④男性ホルモン
男性ホルモンの分泌が異常に高レベルになった場合、排卵障害の他、ニキビや肥満の原因になります。また、場合によっては多毛を伴うこともにあります。

抗ミュラー管ホルモン
不妊クリニックで自費でも人気があるのが抗ミュラー管ホルモン(Anti-Mullerian Hormone:AMH。アンチミューラリアンホルモン検査)という血液検査です。AMHとは卵巣内で発育過程にある卵胞から分泌されるホルモンです。血中AMH値が原始卵胞から発育する前胞状卵胞数を反映すると考えられており、原始卵胞が少なくなってくるとAMHの値が低くなります。このホルモン値が卵胞数を反映します。つまり、この検査により自分が何歳ぐらいまで子どもが産めるか知ることができます。体外受精の採卵数と相関関係があるので非常に注目されています。
血中AMH値の適正値は2.8~5.6ng/ml。AMHの値が高ければ発育卵胞の数が多く、低ければ発育卵胞の数が少ないです。日本での年齢別の平均値(2009-10年SRL調べ)があります。31歳以下では6.21ng/ml。32~33歳では5.42ng/ml。34~35歳では4.75ng/ml。36~37歳では3.82ng/ml。38~39歳では3.18ng/ml。40~41歳では2.44ng/ml。42~43歳では1.67ng/ml。44~45歳では1.31ng/ml。AMHの長所はFSH(卵胞刺激ホルモン)やLH(黄体化ホルモン)と比べるとより正確な卵巣年齢を計れることです。例えば、一般的な32歳女性の卵子数は約6万個。AMH値が1.7ng/mlだとすれば半数の約3万個です。つまり37~39歳が妊娠の限界とも考えられています。
AMHは基本的な体外受精において卵胞の発育を見ながら排卵誘発剤を計画的に使用する治療の目安とされます。年齢が高くAMH値が低ければ治療自体が出来る時間は少なく、排卵誘発剤を注射しても十分効かないために排卵誘発剤も薬を服用する穏やかな方法しかできなくなります。また20歳代でもAMH値が1ng/ml以下も同様と考えられています。若くてもAMHが低い場合は早発閉経で、想定よりも若い年齢で卵巣機能が実年齢以上に衰えている状態です
年齢が若くAMH値が基準値よりも高い場合は多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)が疑われます。この場合、排卵が阻害され卵巣内に多数の卵胞がたまり、月経異常や不妊の原因となる卵巣を過剰に刺激しないように、採卵された卵子は一旦凍結して保存し卵巣の状態を整えてから受精卵を母体に戻します。このように年齢とAMH値の相関によって不妊治療の方法も治療に費やせる時間も大きく変わります。
加齢とともに卵子は劣化し続け、20代前半を境に妊娠する可能性も低下していきます。女性一人一人で卵子の減少スピードは異なります。しかし、この検査値が低くても質の良い卵子が排卵できば妊娠は可能です。AMHが低くても実際には妊娠できる人が結構います。AMHが低いからと言って直ぐにあきらめることはありません。AMHが低いのは残っている卵胞が少ないだけです。AMHの高低と卵巣年齢・卵子の質は違うという研究もあります。低いからと言ってがっかりする必要はありません。卵子の数より卵子の質。これが妊娠には大事な要素です。

抗精子抗体
抗精子抗体が原因で「免疫性不妊症」となると、女性側に原因がある場合は自然妊娠は非常に難しいです。通常の不妊治療や人工授精などを行っても妊娠は余り期待できません。抗精子抗体が陽性(+)の場合、以前は抗体価を下げるために6ヶ月以上コンドームをつけて夫婦生活をして精子を遠ざけるようにする場合や、ステロイドホルモン、頚管粘液を避けるために配偶者間の人工授精をするなどが行なわれていました。
しかし、極めて妊娠率は低く、最近では体外受精・胚移植(IVF-ET)が第一選択となります。抗精子抗体を持つ人のIVF-ETでの妊娠率は他の原因によるIVF-ETでの妊娠率よりもかなり高いのです。理由として抗精子抗体の存在が受精にはマイナスですが、いったん受精卵となれば着床に関してはプラスに働くのではないかと考えられています。
 男性側にも極稀に抗精子抗体がある場合があります。男性の場合では「精管閉鎖」などで精子が精管の外に出てマクロファージに捕り抗体産生リンパ球に情報が送られます。その結果、精子に対する抗体が作られると考えられています。


ホルモン療法
ホルモン療法は乳がんや子宮筋腫などの婦人科疾患、更年期障害、ニキビなどにも使われます。不妊治療の場合、月経周期に合わせてホルモン剤を投与することで妊娠しやすい身体を作るのが目的です。排卵障害や黄体機能不全などにより着床障害が起こっている場合などに投与されます。
ホルモン療法により女性ホルモンの分泌改善や補填されることで、卵胞がより成熟しやすくなり良質の卵子を育てられるようになります。男性の場合は精子の製造能力が低下している場合に精子産生を活性化させ、精液中の精子濃度が上昇し妊娠率も上昇します。
排卵障害や黄体機能不全は勿論、自然排卵がある方でも妊娠しやすさを高める目的で、ホルモン剤の一種である排卵誘発剤が用いられます。黄体ホルモン剤を服用することで、短い周期で妊娠する方もいます。卵胞の発育過程に問題がある「卵胞発育不全」の場合は、排卵前に排卵誘発剤であるクロミフェンなどを服用し卵胞の成熟を促します。排卵誘発剤は投与される方の卵胞の成熟にあわせて服用します。排卵期や排卵後の絨毛性性腺刺激ホルモン(hCG)の注射や、高温期(黄体期)にはプロゲステロン(黄体ホルモン補充薬)で黄体機能の維持をはかります。 
ホルモン療法で使われるホルモン剤の中には、副作用を起こすものも少なくありません。排卵誘発剤の主な副作用は吐き気・嘔吐・食欲不振・疲労感・頭痛・顔面の紅潮・めまい・口の渇き・不正出血などがあります。また、排卵誘発剤には子宮頸管粘液が少なくなることや、子宮内膜が肥厚しないという副作用が起こることがあります。さらに汎用されるクエン酸クロミフェン製剤である「クロミフェン療法」では重大な副作用として、卵巣の過剰刺激による卵巣過剰刺激症候群(OHSS)を起こし卵巣が腫れたり、腹水や胸水がたまったりする副作用が知られ多胎妊娠の可能性もあります。多胎率は2~5%です。黄体ホルモン剤でも同様な副作用が知られています。

 

Copyright 2007-2016 tenyudou acupuncture clinic allright reserved.

  プロフィールページへ レコメンドページへ エッセイページへ リンクページへ プロフィールページへ レコメンドページへ

エッセイページへ リンクページへ ライブ情報へ 問い合わせページへ