子宮内膜と妊娠率


子宮内膜
子宮内膜は排卵前の期間は0.5mm/日で増殖します。排卵後は0.1mm/日で厚くなり着床の頃に最も厚くなります。一般的には内膜が8mm以下は薄い子宮内膜です。目標は8mm以上であり理想は10~13mmです。体外受精で胚移植しても子宮内膜が薄い場合は妊娠率が低下してしまいます。
子宮内膜の質によっても妊娠率に影響があります。子宮内膜にある内膜腺の分泌活動が活発なことと血管が発達して枝のようになっている子宮内膜が良好な内膜です。そして、内膜腺の開口部が点状で血管の発達が少ない状態が不良です。体外受精で胚移植の場合、妊娠成立率には30歳以下では差がなく31~40歳では子宮内膜が良好の方が妊娠成立が多く、41歳以上だと良好と不良の差はありません。ただし41歳以上の方は卵質の低下が考えられます。
 子宮内膜が不良で胚移植する場合、治療開始前に子宮内膜の改善が必要という研究報告があります。凍結胚移植の場合、妊娠成立は良好で42%。不良で15%という結果です。着床をしなかった不良の39例のうち、再度凍結胚移植を試みた際に良好な内膜に変化した15例のうち5例が妊娠に至っています。 変化せず不良のままの24例のうち1例が妊娠しました。子宮内膜の改善には良好群と不良群で血中ホルモンに差がないところからホルモン補充では改善しない質的異常、器質的異常のため末梢循環不全が一因と考えられています。

子宮内膜の厚さに関する研究報告
米国のShady Grove Fertility Reproductive Science Center、Georgetown Universityの産婦人科の共同研究チームが、2002~2005年にかけて1,294治療周期を対象とした体外受精でhCG注射時の子宮内膜の厚さがその後の妊娠率にどう関係するかという研究があります。
1,294治療周期のうち、864周期で妊娠(心拍確認)が確認されました。その内110周期は自然流産し、564周期は出産にいたり190周期は現在妊娠中。採卵前のhCG(卵胞ホルモンや黄体ホルモンの分泌促進・黄体ホルモンの補充)注射時に超音波検査により子宮内膜の厚さを計測したところ、妊娠にいたった周期の内膜厚が平均11.9mmの方が、妊娠できなかった周期の平均11.3mmの内膜厚よりも厚みが大きかったことが判明しています。つまり子宮内膜の厚さが大きいほど妊娠率も高まります。
子宮内膜の厚さが8mmの場合の妊娠率は53.1%であったのに対して16mmになると妊娠率は77.0%に上昇しています。同様に生産率(出産にまでいたった確率)は8mmの場合は44.9%であったのに対して、16mmになると67.6%に上昇しています。研究者は子宮内膜の厚さが最も薄いグループでも比較的高い妊娠率を得ているので子宮内膜が薄いからといって、移植をキャンセルする必要はないと強調しています。子宮内膜の厚さと妊娠率には明らかな関連性が確認されるものの、子宮内膜が6~7mmの周期でも質のよい胚盤胞が移植されれば50%の妊娠率は得られたとしています。

薬物療法
子宮内膜の厚さが厚いほど妊娠率が高いという研究報告はその他にも多数あります。この研究報告と同様に採卵前のhCG注射時の子宮内膜の厚みが厚いほど妊娠率が高くなっています。子宮内膜が6mm以下でも25例中14例が妊娠したとの報告もあります。薄い子宮内膜への対応として子宮内膜の血流改善が効果的という報告があります。
ペントキシフィリン
子宮内膜が薄い場合、子宮内膜の血流低下している場合が多く、血流を増やすためにペントキシフィリンが効果的です。ペントキシフィリンは血管拡張剤として子宮内膜への血流改善することが知られています。具体的にはトレンタール800mg/日を服用します。ペントキシフィリンは毛細血管を拡げ血小板の凝集を抑制することで血流量が増加します。
ビタミンE・ビタミンC
薄い子宮内膜では間質の活性酸素によるダメージが強く、それを改善できれば内膜が薄くても着床できる可能性があります。活性酸素の抑制にはビタミンE(トコフェロール)が有効とされています。ビタミンEは血管の保護作用と血小板凝集抑制作用により内膜の血流を増加させます。ビタミンEであるユベラニコチネート400mg/日や300mg×3/日を服用します。また、ビタミンC(アスコルビン酸)には抗酸化作用もあります。ビタミンEと同様に活性酸素を抑制して着床率を上げます。具体的にはアスコルビン酸300mg×3/日や2000mg/日を服用します。
不妊専門クリニックである虹クリニック(荻窪)による受精着床学会での演題に「子宮内膜の薄い症例に対するビタミンE療法の検討」があります。クリニックにてビタミンE、ビタミンCを投与しながら融解胚移植を受けた30名(平均年齢40.4歳)を対象。融解胚移植の治療前1~3周期からビタミンE(ユベラ300mg 3×)、ビタミンC(アスコルビン酸300mg 3×)を内服し妊娠判定まで継続。子宮内膜厚、着床率、妊娠率を検討。考察としてビタミンE療法により子宮内膜はそれ程厚くならない。着床率、妊娠率は通常の融解胚移植と同等の結果が得られ、薄い内膜でも着床、妊娠率の引き上げが期待されます。ホルモン補充周期併用での妊娠率も複数認められ妊娠への効果が期待されています。結論としてはビタミンE療法により子宮内膜は厚くならないが子宮内膜が薄い状態でも着床率、妊娠率を引き上げる可能性があり有用と考えられます。

バイアグラ
ED治療薬で知られるバイアグラを膣内投与すると子宮内膜の血流増加が認められ内膜を厚くするという報告があります。バイアグラを溶かして作った腟錠を使用すると卵巣や子宮内の血流が改善され内膜ができやすくなり副作用もないとされています。
アスピリン
鎮痛作用や血小板凝集抑制作用で知られるアスピリンを80mg/日を内服することで子宮内膜への血流増加し内膜を増加させることが期待されます。これらの薬剤は妊娠した場合は妊娠が判明した次第で中止します。

着床障害
1年以上の不妊治療で妊娠できない主な原因は「着床障害」です。子宮内膜の異常には子宮内膜過形成(増殖症)と間質(受精卵が着床する場所)の出血、妊娠するためにさまざまな物質を分泌する内膜腺と間質の発達バランスが悪いことなどが挙げられます。そこで子宮と卵管の精子通過を妨げる子宮内避妊システム「ミレーナ」を用いる治療法があります。これを子宮内に装着し黄体ホルモン(レボノルゲストレル)を持続的に放出し5年間にわたり避妊効果を発揮します。『妊娠希望なのに避妊!?』。 ミレーナを半年程度挿入して、それから放出される黄体ホルモンが子宮内膜を正しい状態にリセットすることで着床しやすくなります。
ある不妊治療クリニックでは2006年から3年間の統計では、体外受精において正常な子宮内膜は妊娠率38%・流産率8%、子宮内膜異常では妊娠率6%・流産率67%です。20人の患者にミレーナで子宮内膜が改善した人の妊娠率は80%。そして現段階で流産はないとのことです。ここにも子宮内膜の改善が妊娠率の向上につながるデータが提示されています。


着床率を上げる鍼灸治療

子宮内膜が薄い場合、子宮内膜が血流低下している場合が多いので、血流を増やすために鍼灸治療や漢方薬で血流改善する方法もあります。鍼灸治療では全身のツボに鍼をし神経的アプローチ、経絡的アプローチ、運動学的アプローチなどにより血行促進や自律神経調整により身体を整ることが子宮内膜の状態を良好にします。
また、鍼灸治療により女性ホルモンは活性化し卵巣や子宮の血流が良くなるので妊娠しやすく、体外受精での採卵した卵子の質も良くなり受精卵の移植においても子宮の血流が良くなっていると着床率も上がります。つまり鍼灸は卵子の質の向上と子宮内膜の質の改善につながります。鍼灸治療で妊娠しやすく妊娠継続して出産に至る例が多いです。


自分でできること
日常生活で着床率を上げるには禁煙はもちろん、副流煙にも注意が必要です。着床に悪影響を及ぼす因子である喫煙は血流低下させて子宮内膜の成長を妨げます。効果が出るまで2~3年かかるといわれていますから、妊娠希望の方はすぐに止めた方が無難です。
発汗を促し全身血行の改善を目的としてウォーキングなどの運動療法を行うことで、子宮内膜の質が良くなり妊娠しやすい内膜になります。下肢の血流増加を促すために半身浴・散歩・ストレッチ・ヨガなどもオススメです。

 

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