3.子宮因子
貧血があり、月経量が多い子宮筋腫では、子宮の内側へ隆起する「粘膜下筋腫」の疑いがあります。粘膜下筋腫は受精卵の子宮内膜への着床障害による不妊症になります。子宮筋腫は着床を妨げるだけでなく、精子が卵子へ到達するのを妨げて妊娠しにくくなることもあります。同様に子宮内膜ポリープも着床障害の原因になります。子宮内腔に癒着をきたし、月経量が減少する状態を「アッシャーマン症候群」といい着床に影響することがあります。
また、「子宮奇形」は先天的に子宮が変形している状態ですが、不妊症の原因というより、むしろ反復する流産の原因となるといわれています。
①着床障害
1年以上の不妊治療で妊娠できない主な原因は「着床障害」です。子宮内膜の異常には子宮内膜過形成(増殖症)と間質(受精卵が着床する場所)の出血、妊娠するためにさまざまな物質を分泌する内膜腺と間質の発達バランスが悪いことなどが挙げられます。
子宮と卵管の精子通過を妨げる子宮内避妊システム「ミレーナ」を用いる治療法があります。これを子宮内に装着し黄体ホルモン(レボノルゲストレル)を持続的に放出し5年間にわたり避妊効果を発揮します。『妊娠希望なのに避妊!?』。 ミレーナを半年程度挿入して、それから放出される黄体ホルモンが子宮内膜を正しい状態にリセットすることで着床しやすくなります。
ある不妊治療クリニックでは2006年から3年間の統計では、体外受精において正常な子宮内膜は妊娠率38%・流産率8%、子宮内膜異常では妊娠率6%・流産率67%です。20人の患者にミレーナで子宮内膜が改善した人の妊娠率は80%。そして現段階で流産はないとのことです。ここにも子宮内膜の改善が妊娠率の向上につながるデータが提示されています。
4.頸管因子
排卵期に透明で粘調な帯下(おりもの)の増加がありますが、子宮奇形や子宮頸部の手術、子宮頸部の炎症などにより、頸管粘液量が少なくなった場合、精子が子宮内へ貫通しにくくなり不妊症になります。
5.免疫因子
免疫異常では抗精子抗体(精子を障害する抗体)があります。特に精子不動化抗体(精子の運動を止めてしまう抗体)を産生する場合、抗体が頸管粘液内にも分泌され、運動率の高い良い精子でも通過を妨げてしまいます。また、卵管内にも精子不動化抗体は分泌され、人工授精で精子を子宮腔の奥まで注入しても、卵管内でその通過が妨げられてしまいます。受精の場面でも、精子不動化抗体は精子が卵子と結合することを妨害し、不妊症になることがあります。
①抗精子抗体
抗精子抗体が原因で「免疫性不妊症」となると、女性側に原因がある場合は自然妊娠は非常に難しいです。通常の不妊治療や人工授精などを行っても妊娠は余り期待できません。抗精子抗体が陽性(+)の場合、以前は抗体価を下げるために6ヶ月以上コンドームをつけて夫婦生活をして精子を遠ざけるようにする場合や、ステロイドホルモン、頚管粘液を避けるために配偶者間の人工授精をするなどが行なわれていました。しかし、極めて妊娠率は低いのです。
最近では体外受精・胚移植(IVF-ET)が第一選択となります。抗精子抗体を持つ人のIVF-ETでの妊娠率は他の原因によるIVF-ETでの妊娠率よりもかなり高いのです。理由として抗精子抗体の存在が受精にはマイナスですが、いったん受精卵となれば着床に関してはプラスに働くのではないかと考えられています。
男性側にも極稀に抗精子抗体がある場合があります。男性の場合では「精管閉鎖」などで精子が精管の外に出てマクロファージに捕り抗体産生リンパ球に情報が送られます。その結果、精子に対する抗体が作られると考えられています。
6.原因不明不妊
不妊症の検査をしても明らかな不妊の原因が見つからない場合を「原因不明不妊」といいます。原因不明不妊は不妊症の1/3を占めるといわれています。原因がないわけではなく、検査では見つからない原因が潜んでいます。
その原因のひとつは、何らかの原因で精子と卵子が体内で受精できない場合です。人工授精や体外受精治療の適応となります。
もうひとつの原因としては、精子あるいは卵子そのものの妊孕性(赤ちゃんを作る力)が低下している、あるいはなくなっている場合です。加齢などがこの原因となると考えられており、その一つの証拠として原因不明不妊は夫婦の年齢が上昇すると一般に割合が高くなることが報告されています。妊孕力は年齢とともに低下し、女性の場合、37~44歳の間に消失します。いったん精子や卵子の力が消失してしまうと、現在の医学では有効な治療はほとんどありません。そのため、そうなる前に治療を開始することが唯一の対処法となります。