<恬愉堂 不妊治療とは・7

 

 

女性の不妊症の原因


女性の不妊症の原因には、排卵因子(排卵障害)、卵管因子(閉塞・狭窄・癒着)、子宮因子(子宮筋腫・子宮内膜ポリープ・先天奇形)、頸管因子(子宮頸管炎、子宮頸管からの粘液分泌異常など)、免疫因子(抗精子抗体など)などがあります。このうち排卵因子、卵管因子に男性不因子を加えた3つは頻度が高く、不妊症の3大原因と言われています。

1.排卵因子
月経周期が25日~38日型でなく、基礎体温も二相性でない月経不順では、排卵障害の可能性があります。排卵障害の原因はさまざまですが、プロラクチンという乳汁を分泌させるホルモンの分泌亢進による「高プロラクチン血症」や、男性ホルモンの分泌亢進を特徴とする「多嚢胞性卵巣症候群:PCOS」によるものがあります。その他、環境の変化等に伴う大きな精神的ストレス、あるいは短期間に大幅なダイエットに成功した場合にも月経不順をきたし、不妊症になります。日本人の女性は45~56歳の間に閉経を迎えますが、まれに20歳代や30歳代にもかかわらず卵巣機能が極端に低下し無排卵に陥る「早発卵巣不全」も不妊症の原因になります。
①排卵障害
排卵障害とは、卵子が育たない、または育っても排卵できない状態を指します。不妊症の原因のひとつと考えられています。脳内または卵巣に原因がある場合があります。
≪脳内に原因がある場合≫
①視床下部性(ストレス)やピルの服用。
②下垂体性(下垂体腫瘍)や大出血による下垂体の異常などが考えられます。
≪卵巣に原因がある場合≫
①早発卵巣不全(POF)は40歳未満で月経が止まる早発閉経です。
②多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)は若年で排卵障害が強い方にみられます。ホルモン異常で卵子が成熟できず、月経が2~3ヶ月に1回となり、その結果、卵巣の表皮が厚くなり増々に排卵しにくくなります。
③早期卵巣機能廃絶症は卵子が成熟せず早い段階で無くなり排卵しなくなる障害です。
④卵巣過剰刺激症候群(OHSS)は排卵誘発剤による副作用で過剰な排卵が起こります。この現象が多胎の原因となり時にOHSSの原因となります。通常、親指位の卵巣が5~6倍に腫れ腹水がたまることや流産する可能性もあります。最近はhMG製剤の改善や超音波検査でOHSSが解り、対策が早く取れるようになっています。

2.卵管因子
性器クラミジア感染症は、卵管の閉塞や卵管周囲の癒着によって卵管に卵子が取り込まれにくくなるために不妊症になります。特に女性ではクラミジアにかかっても無症状のことが多く、感染に気づかないことがあります。
帝王切開や虫垂炎など骨盤内の手術を受けた経験者も卵管周囲の癒着をきたしていることがあります。また月経痛が徐々に悪化し、鎮痛剤の使用量が増えている方は子宮内膜症の疑いがありますが、この子宮内膜症の中に卵管周囲の癒着がみつかることもあります。

①性器クラミジア感染症
日本で一番多い性感染症(STD)はクラミジアであり、その感染者数は100万人以上といわれています。一般の高校生を調査したところ、性経験者のうち、女性では13.1%、男性では6.7%が感染していたとの報告があります。特に10歳代後半から20歳代にかけて感染者が増加しています。妊婦の方は、妊婦検診を受けることにより、出産時の母子感染を防ぐことができます。

性器クラミジア感染症はクラミジア・トラコマチスという病原体により感染します。感染者との粘膜同士の接触や精液、腟分泌液を介して感染します。あらゆる性行為(セックス、アナルセックス、オーラルセックス)で感染します。オーラルセックスでは、咽頭へも感染します。クラミジアに感染しているとHIV(エイズウイルス)への感染が3~5倍になります。感染していても、自覚症状がないことが多いのがクラミジアの特徴です。男性・女性ともに、感染しても症状を感じにくく、気づかないままパートナーへ感染させてしまうことがあります。
男性が主に感染するところは尿道です。尿道炎や精巣上体炎(副睾丸炎)などの症状が出ます。尿道からの分泌物(膿)、軽い排尿痛、尿道のかゆみや不快感、精巣上体の腫れ、軽い発熱や痛みがあります。感染しても症状が出ないことが多く、治療せずに放っておくと前立腺炎や血精液症になることもあります。
女性では子宮頸管へ感染して「子宮頸管炎」を起こします。おりものの増加、不正出血、下腹部痛、性交時痛などがあります。しかし、女性の半数以上が全く症状を感じないと言われており、感染したまま放っておくと「卵管炎」を起こし、子宮外妊娠や不妊症の原因にもなります。その後、腹腔内に進入し、骨盤内でさまざまな症状が出ます。上腹部へ感染が広がると肝周囲炎を引き起こします。
治療には抗菌薬、とくにテトラサイクリン系薬、マクロライド系薬、およびニューキノロン系薬が使用されます。クラミジアは男女間でお互いに感染させるいわゆるピンポン感染があるため、両者の治療を同時に行うことが重要です。予防にはコンドームの使用、感染が疑われる相手との性的交渉を避けるしかありません。

②キャッチアップ障害 
卵巣と卵管は直接つながっていません。排卵された卵子をキャッチするのは卵管采(らんかんさい)です。卵管の先にある卵管開口部で手掌を広げたような形をして排卵に合わせて卵巣に近づき、卵子を卵管内に取り込みます。卵管采で確実に卵子がキャッチされないと卵管に取り込まれません。受精は卵管膨大部で行われますから、結果として妊娠にいたりません。

不妊症の原因のひとつにキャッチアップ障害やピックアップ障害(卵管采不全)があります。不妊クリニックでいろいろな検査を行っても不妊の原因が不明であったり、また、原因と思われる異常を治療しても妊娠しない場合の半数は、卵管采による卵子の補足障害と考えられます。 なぜ卵管采が機能しないのか? その理由として最も多いのは「卵管癒着」です。卵管が動けない状態になっているために、卵巣に近づけず取り込めないと考えられています。また、卵管に子宮内膜症などで炎症があり、それにより機能不全を起こす場合もあります。さらに卵管水腫やクラミジア感染の既往歴がある場合には卵管采周囲の癒着も考えられます。
そして加齢による卵管采の動きが低下するのではないかとも考えられています。 その他、便秘による卵管の圧迫、ストレスによる卵管の動きの抑制、卵管采の分泌細胞や線毛細胞の異常などが考えられます。 卵管癒着の検査には「腹腔鏡検査」があります。おへその下を1~2㎝切開し、お腹を炭酸ガスで膨らませ、直径1㎝程の内視鏡を挿入し腹腔内の様子をモニターリングし、癒着などがあればレーザー治療あるいは焼灼を行い癒着部位を切除します。この検査でキャッチアップ障害が全て解決する訳ではありません。 タイミング法や人工授精でなかなか良い結果につながらない場合、さまざまな検査を通してキャッチアップ障害が疑われます。しかし、排卵された卵子を卵管でキャッチする実際の過程を肉眼で確認することはできません。不妊検査では明確に診断することはできません。キャッチアップ障害ではタイミング法や人工授精で妊娠に至るのは難しいです。ですから、体外受精を勧める不妊クリニックも多いです。>


③第二子不妊症 
5歳以上の出産は俗に高齢出産と呼ばれています。当初は『一人でも授かれば・・・』という思いですが、一人目が1~2歳くらいになると、『一人っ子ではかわいそうだから』などの理由から第二子を希望します。第一子がすでに高齢出産であれば、第二子ともなると母体も老化しています。本人は『できて当然』という思いと裏腹に体の方ではできにくくなっています。
最初の妊娠・出産により、体内の妊娠環境が大きく変わっています。ある人はできにくくなるだろうし、ある人はできやすくなるかもしれません。第二子不妊症で子供ができにくくなる人の理由には加齢、夫との性生活の減少、卵管の癒着や動きの活性の低下、授乳状況(プロラクチン分泌)などが影響していると考えられます。

性初産で苦労したのに、逆に第二子ができやすくなる人は、禁欲生活からの解放による性生活の活性化や、規則正しい生活によるホルモンリズムの回復などがあげられます。
特に第一子が普通にできて第二子不妊症という場合では、ホルモン値の低下など何らかの原因がある場合がほとんどです。当院に来院した方は2歳差で第二子を計画していましたが、第一子が小学生になってから第二子がおめでたとなりました。原因は「不育症」でした。その治療をしたら無事妊娠しました。まず自分の身体の状態を把握するためにレディースクリニックなどを受診して検査や相談することを強くオススメします。
最近では「二人目の壁」などと言われます。子どもを1人育てるのに約3000万円かかるといわれています。家族を増やすために治療して妊娠・出産に費用がかかり、家族が増えれば大きな出費が必要となると考えると夫婦にとって二人目はかなりの経済的負担になります。平成23年の全給与所得者に占める年収300万円以下の人口割合は40.8%でした。日本の労働人口の約4割が年間の収入が300万円以下であるという結果が出ています。そして男性平均年収は504万円だったのに対し、女性平均は268万円。年収300万円以下の人口割合も男性23.9%に対し、女性が66.1%と男女間での収入格差がみられます。現在の日本では経済的基盤がぜい弱な夫婦にとって子どもを産み育てる環境が整っているとはいえません。

鍼灸治療で女性ホルモンは活性化し卵巣や子宮の血流が良くなるので妊娠しやすく、体外受精での採卵した卵子の質も良くなり受精卵の移植においても、子宮の血流が良くなっていると着床率も上がります。第一子の不妊症も色々と大変ですが第二子不妊症でお困りの方が多く来院しています。

3.子宮因子
貧血があり、月経量が多い子宮筋腫では、子宮の内側へ隆起する「粘膜下筋腫」の疑いがあります。粘膜下筋腫は受精卵の子宮内膜への着床障害による不妊症になります。子宮筋腫は着床を妨げるだけでなく、精子が卵子へ到達するのを妨げて妊娠しにくくなることもあります。同様に子宮内膜ポリープも着床障害の原因になります。子宮内腔に癒着をきたし、月経量が減少する状態を「アッシャーマン症候群」といい着床に影響することがあります。
また、「子宮奇形」は先天的に子宮が変形している状態ですが、不妊症の原因というより、むしろ反復する流産の原因となるといわれています。

①着床障害
1年以上の不妊治療で妊娠できない主な原因は「着床障害」です。子宮内膜の異常には子宮内膜過形成(増殖症)と間質(受精卵が着床する場所)の出血、妊娠するためにさまざまな物質を分泌する内膜腺と間質の発達バランスが悪いことなどが挙げられます。

子宮と卵管の精子通過を妨げる子宮内避妊システム「ミレーナ」を用いる治療法があります。これを子宮内に装着し黄体ホルモン(レボノルゲストレル)を持続的に放出し5年間にわたり避妊効果を発揮します。『妊娠希望なのに避妊!?』。 ミレーナを半年程度挿入して、それから放出される黄体ホルモンが子宮内膜を正しい状態にリセットすることで着床しやすくなります。
ある不妊治療クリニックでは2006年から3年間の統計では、体外受精において正常な子宮内膜は妊娠率38%・流産率8%、子宮内膜異常では妊娠率6%・流産率67%です。20人の患者にミレーナで子宮内膜が改善した人の妊娠率は80%。そして現段階で流産はないとのことです。ここにも子宮内膜の改善が妊娠率の向上につながるデータが提示されています。
 

4.頸管因子
排卵期に透明で粘調な帯下(おりもの)の増加がありますが、子宮奇形や子宮頸部の手術、子宮頸部の炎症などにより、頸管粘液量が少なくなった場合、精子が子宮内へ貫通しにくくなり不妊症になります。

5.免疫因子
免疫異常では抗精子抗体(精子を障害する抗体)があります。特に精子不動化抗体(精子の運動を止めてしまう抗体)を産生する場合、抗体が頸管粘液内にも分泌され、運動率の高い良い精子でも通過を妨げてしまいます。また、卵管内にも精子不動化抗体は分泌され、人工授精で精子を子宮腔の奥まで注入しても、卵管内でその通過が妨げられてしまいます。受精の場面でも、精子不動化抗体は精子が卵子と結合することを妨害し、不妊症になることがあります。
①抗精子抗体
抗精子抗体が原因で「免疫性不妊症」となると、女性側に原因がある場合は自然妊娠は非常に難しいです。通常の不妊治療や人工授精などを行っても妊娠は余り期待できません。抗精子抗体が陽性(+)の場合、以前は抗体価を下げるために6ヶ月以上コンドームをつけて夫婦生活をして精子を遠ざけるようにする場合や、ステロイドホルモン、頚管粘液を避けるために配偶者間の人工授精をするなどが行なわれていました。しかし、極めて妊娠率は低いのです。

最近では体外受精・胚移植(IVF-ET)が第一選択となります。抗精子抗体を持つ人のIVF-ETでの妊娠率は他の原因によるIVF-ETでの妊娠率よりもかなり高いのです。理由として抗精子抗体の存在が受精にはマイナスですが、いったん受精卵となれば着床に関してはプラスに働くのではないかと考えられています。
 男性側にも極稀に抗精子抗体がある場合があります。男性の場合では「精管閉鎖」などで精子が精管の外に出てマクロファージに捕り抗体産生リンパ球に情報が送られます。その結果、精子に対する抗体が作られると考えられています

6.原因不明不妊
不妊症の検査をしても明らかな不妊の原因が見つからない場合を「原因不明不妊」といいます。原因不明不妊は不妊症の1/3を占めるといわれています。原因がないわけではなく、検査では見つからない原因が潜んでいます。
その原因のひとつは、何らかの原因で精子と卵子が体内で受精できない場合です。人工授精や体外受精治療の適応となります。
もうひとつの原因としては、精子あるいは卵子そのものの妊孕性(赤ちゃんを作る力)が低下している、あるいはなくなっている場合です。加齢などがこの原因となると考えられており、その一つの証拠として原因不明不妊は夫婦の年齢が上昇すると一般に割合が高くなることが報告されています。妊孕力は年齢とともに低下し、女性の場合、37~44歳の間に消失します。いったん精子や卵子の力が消失してしまうと、現在の医学では有効な治療はほとんどありません。そのため、そうなる前に治療を開始することが唯一の対処法となります。


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