00 ED・男性不妊症


83世界保健機関(WHO)が発表した不妊症の原因の統計では、不妊症の原因は41%が女性側、24%が女性男性ともにあり、24%が男性側、11%が原因不明となっています。このことからも、妊症の原因が男性側にある夫婦は約4組に1組で、女性男性両方に不妊症の原因がある夫婦も約4組に1組となり、男性の原因が考えられるものは約2組に1組と約半数にのぼります。そのため、不妊症の検査は夫婦ともに受けることが原則とされています。

男性不妊症
男性不妊症の原因は精液異常の場合が約80%とされています。男性が精液検査をして初めてわかることが多いです。大体1回の射精で出る精液の量は2ml以上が正常です。その中には4000万個以上の精子が存在します。そして、運動率50%以上、奇形率15%以下が正常です。精子検査で採精した精液の量や精子数や運動率、奇形率などがわかります。
「乏精子症」は精子濃度(1mlの精子数)が2000万個に満たない場合です。乏精子症の80%近くが原因不明ですが、乏精子症の原因とされ治療可能な病気に精索静脈瘤があります。手術により妊娠率が約6倍アップという報告もあります。
精液中に精子がまったく見当たらない場合は「無精子症」、直線運動している精子が少ない場合は「精子無力症」と診断されます。これらの問題があると受精しづらく自然妊娠は難しくなるとされています。
84また、WHOは奇形精子の基準は正常精子の15%未満と定めています。奇形とは尻尾の部分が曲がっている、精子の尻尾が少し短い、頭部が大きい、変形などです。主に精子の外見上の分類で奇形精子は定義されています。奇形精子は誰にでも存在します。割合が多い場合が問題となります。正常な形態の精子が少ない場合は「奇形精子症」と診断されます。
乏精子症のような場合、通常は採精できません。症状に応じて特別な精子回収法を行います。手術で精巣内の組織を採取・回収して精子の有無を確かめる精巣内精子採取法(TESE)、陰嚢を切開し精巣上体(精子に運動能を与え精子を蓄積する場所)を陰嚢外へ出し、顕微鏡下で精巣上体管に穿刺し精子を回収する顕微鏡下精巣上体精子採取法(MESA)、陰嚢を切開せず、皮ふの上から直接精巣に針を刺して精子を回収する経皮的精巣上体精子採取法(PESA)を行います。無精子症などでは顕微授精が選択されます。無精子症以外では禁煙や食事内容に見直しなど生活指導が行われ、時には薬による治療や精索静脈瘤がある場合は手術が行われます。
さらに「精子通路障害」には精子は造られているにもかかわらず、精子輸送路に問題のある「逆行性射精」、「前立腺炎」、「精索上体炎の後遺症」などがあります。また「勃起射精障害」では、男性性機能障害のひとつで勃起が十分でないために満足な性行為が行えない勃起不全(ED)があります。その他にも「遅漏」や「早漏」などがあります。

男性不妊症の原因
男性の不妊症の原因は、大きく2つに大別されます。ひとつは射精がうまくいかない「性機能障害」と、射精される精液の中の精子の数や運動率が悪くなっている「精液性状低下」に分けられます。後者は軽度・中等度のものと、高度および「無精子症」に分けられます

1、性機能障害
性機能障害には、ストレス等により有効な勃起が起こらず性行為がうまくいかない勃起障害(ED)や性行為は出来ても腟内射精が困難な「腟内射精障害」があります。不妊の治療としてタイミング指導を行う場合、タイミングに固執してしまうと性行為そのものの障害を来たしたりする場合もあります。
その他、動脈硬化や糖尿病も性機能障害の原因になります。糖尿病は軽症でも勃起障害となり、重症となると射精障害や精液量が減少し逆行性射精(一部の精液が膀胱内に射出される)や精液が出なくなる「無精液症」を来します。

(1)ED(勃起不全)
日本性機能学会の『ED診療ガイドライン』(2012年版)によると、さまざまデータから導き出された世界のED患者数は1995年時点で1億5200万人です。2025年には3億2200万人に倍増するとみられています。地区別では、特に人口増加が著しく、高齢化も進んでいるアジア地域で大幅に増えると予測されています。

89排尿症状と健康状態について、特定地域で継続的に行った研究では、平均年齢58.39歳の男性2213人を1996年から2004年まで解析したところ、EDの頻度は加齢に伴って増加することが分かっています。
日本では1998年にEDの実態を探る初の本格的な疫学調査が行われました。住民基本台帳に基づいて、郵送訪問調査という形で厳密に行われたので、全国規模での正確な有病者数の推定が可能になりました。調査対象は全国100地点で無作為に抽出された2000人。回収率は55.2%でした。この調査によると30~79歳の男性のEDの有病者数は約1130万人でした。1130万人の内訳は、中等度ED(時々性交に十分な勃起を得ることができず維持することもできない)が870万人、完全ED(毎回性交に十分な勃起が得られない。また維持もできない)が260万人と推定されています。日本人男性のED有病率を年代別にみると、40~45歳(16%)、46~50歳(20%)、51~55歳(36%)、56~60歳(47%)、61~65歳(57%)、66~70歳(70%)でした。年齢を重ねるにつれて、有病率が高まっていることが分かります。
 EDはまったく勃起しない完全型EDから、軽度ED(たいていの場合、性交に十分な勃起を得ることができて維持することもできる)でもEDと診断されます。EDの原因には加齢、心因性、薬剤性、内分泌性(ホルモン異常)、神経性(脊髄損傷や骨盤内の手術後など)、血管性(動脈硬化など)があります。近年では糖尿病や高脂血症、高血圧、狭心症などの生活習慣病との関係も指摘されています。メタボリックシンドロームとの関連も注目されています。

(2)EDの鍼灸治療
90ED・インポテンツは東洋医学では陽萎(ようい)と言います。中国では茎が萎えるので陰萎(いんい)と呼ばれることもあります。原因は以下です。
①腎精不足
腎には腎陽と腎陰とがありますが、腎陽(生まれ持った生命エネルギー)の虚衰があげられます。腎精は人間の生長、発育および生殖を主っていますが、老化現象と供に腎精は不足して行き性機能や生殖能力に影響を与えます。
②気血不足
腎精を補って行くのは飲食物です。東洋医学で言う処の脾胃(ひい)の問題です。食生活が悪いと腎精を補えないことによる気血不足になります。栄養が行き渡らなければ問題がでてきます。
③肝気鬱結
「肝」の働きはさまざまで全身の気の巡り、精神・情緒の安定、血の貯蔵、筋肉や目の生理機能を維持などです。肝はストレスに弱く、イライラ感・怒りっぽい・憂鬱感、疑心暗気が強い、太息(たいそく:ため息)が多いなどの精神症状が顕著に現れます。また、肝の経絡(気の通り道)は男性生殖器と関係が深いです。肝は蔵血作用がありますから、勃起は海綿体の充血ですから男性生殖器を養うことができずに問題となってきます。
④湿熱
これはメタボリックシンドロームの人に多いです。体の中の過剰な水分が、熱と供に悪さをします。精子は熱に弱いのです。ですから陰嚢は外部に突出しているのです。

(3)EDの漢方処方
①八味地黄丸(はちみじおうがん)

下半身の脱力感、腰痛、足腰の冷え、疲れやすい、尿が近い(夜間頻尿)、尿の出が悪い(前立腺肥大症)、口が渇くなどがみられます。胃腸障害のない方に用います。
②牛車腎気丸(ごしゃじんきがん)
疲れやすい、四肢が冷えやすく、尿量減少または多尿、口渇がある方では下肢痛、腰痛、しびれ、高齢者さんのかすみ目、排尿困難、頻尿、むくみ(浮腫) などがみられます。八味地黄丸より、むくみ(浮腫)、下肢のしびれ、痛みの強い方に適しています。
③桂枝加竜骨牡蠣湯(けいしかりゅうこつぼれいとう)
体質虚弱(虚証)、疲れやすく、興奮しやすい方では神経質、不安感、不眠症、眼精疲労、めまいなどがみられます。小児夜泣き、小児夜尿症などの子供にも使えます。心因性のインポテンツにも有効です。
④補中益気湯(ほちゅうえっきとう)
元気がない、胃腸虚弱、頭痛、疲れやすい方で、虚弱体質、疲労体質、疲労倦怠感、病後の衰弱、食欲不振、盗汗(とうかん:寝汗) などがみられます。気血の不足の方に用います。気血不足を補う十全大補湯(じゅうぜんだいほとう)もオススメです。精子無力症・精子欠乏症・無精子症は気血不足を補うことが大切です。
⑤六味丸(ろくみがん)
下半身の脱力感、疲れやすい、口渇、尿の出が悪い(前立腺肥大症)、手や足の裏に汗をかきやすいなどがみられます。この六味丸は冷えのない陰虚証に用い、八味地黄丸は陽虚証に用います。
⑥柴胡加竜骨牡蠣湯(さいこかりゅうこつぼれいとう)
胸部充塞感(胸脇苦満)、動悸、便秘、尿量減少を伴う方で、イライラ、神経不安、不眠、神経衰弱症、ヒステリー、動脈硬化症、脳溢血の予防、腎臓病、高齢者の慢性関節炎、小児の夜泣きなどにも用います。
ED・インポテンツは、東洋医学でいうところの虚証の人が多いです。精力減退は特に腎虚によって起こると考えられています。そこで、腎の機能改善や補う漢方薬や食養生が大事です。まずはベーシックな食生活の改善が大切です。圧倒的にエネルギー不足が多いです。ウナギ・山芋・にんにく・根菜類・ネバネバ系食品などがオススメです。

2、軽度~中等度の精液性状低下
精子は精巣(睾丸)の中で作られ、精巣上体という細い管を通り抜ける間に運動能力をえて、受精を行うことの出来る完全な精子となります。精巣での精子形成や、精巣上体での運動能獲得過程に異常があると、精子数の減少、 精子の運動率低下、奇形率の増加などにより受精する能力が低下します。
このような病態を「造精機能障害」と呼びますが、その一部には「精索静脈瘤」が関与すると言われています。精索静脈瘤は外科的手術によって造精機能障害が回復し得る可能性があります。

3、高度の精液性状低下、無精子症
精液中の精子の数が極端(通常の1/100以下など)に少ない、あるいは運動率が極端に低い(20~30%以下)の場合は高度の精液性状低下です。上記の造精機能障害のほかに、視床下部-下垂体で造精機能を司るホルモンの分泌低下による低ゴナドトロピン性性腺機能低下症、停留精巣の手術後やおたふく風邪による耳下腺炎性精巣炎によっても、高度の精液性状低下が見られることがあります。
無精子症とは、射出された精液の中に精子が全く見られない状態をいいます。精巣内では精子が作られているのに精液中に精子が出てこない「閉塞性無精子症」もあります。代表的な疾患として先天性両側精管欠損症や精巣上体炎後の炎症性閉塞、鼠径ヘルニア手術などがあります。
一方、閉塞がないのに精子が全く作られていない無精子症もあり、そのほとんどは原因不明ですが、10~19%に染色体異常である「クラインフェルター症候群」(47XXY)がみられます。無精子症だからと言われて決してあきらめることはありません。閉塞した精路を再建したり、精巣内の精子を回収して顕微授精することで、お子さんを授かる可能性が出てきます。


(1)精子異常
男性不妊症の原因は精子異常の場合が約80%とされています。男性が精液検査をして初めてわかることが多いです。大体1回の射精で出る精液の量は2ml以上が正常です。その中には4000万個以上の精子が存在します。そして、運動率50%以上、奇形率15%以下が正常です。精液検査で採精した精液の量や精子数や運動率、奇形率などがわかります。

84「乏精子症」は精子濃度(1mlの精子数)が2000万個に満たない場合です。乏精子症の80%近くが原因不明ですが、乏精子症の原因とされ治療可能な病気に精索静脈瘤があります。手術により妊娠率が約6倍アップという報告もあります。
精液中に精子がまったく見当たらない場合は「無精子症」、直線運動している精子が少ない場合は「精子無力症」と診断されます。これらの問題があると受精しづらく自然妊娠は難しくなるとされています。
また、WHOは奇形精子の基準は正常精子の15%未満と定めています。奇形とは尻尾の部分が曲がっている、精子の尻尾が少し短い、頭部が大きい、変形などです。主に精子の外見上の分類で奇形精子は定義されています。奇形精子は誰にでも存在します。割合が多い場合が問題となります。正常な形態の精子が少ない場合は「奇形精子症」と診断されます。
乏精子症のような場合、通常は採精できません。症状に応じて特別な精子回収法を行います。手術で精巣内の組織を採取・回収して精子の有無を確かめる精巣内精子採取法(TESE)、陰嚢を切開し精巣上体(精子に運動能を与え精子を蓄積する場所)を陰嚢外へ出し、顕微鏡下で精巣上体管に穿刺し精子を回収する顕微鏡下精巣上体精子採取法(MESA)、陰嚢を切開せず、皮ふの上から直接精巣に針を刺して精子を回収する経皮的精巣上体精子採取法(PESA)を行います。無精子症などでは顕微授精が選択されます。無精子症以外では禁煙や食事内容に見直しなど生活指導が行われ、時には薬による治療や精索静脈瘤がある場合は手術が行われます。
精子数が極端に少なかったり無精子症の場合には、染色体検査や遺伝子検査が勧められることがあります。染色体の軽微な変化や遺伝子異常が、精子形成障害の原因になっている可能性があるからです。また、精巣内精子採取術などの治療の可能性を検討するうえでも大切です。
さらに「精子通路障害」には精子は造られているにもかかわらず、精子輸送路に問題のある「逆行性射精」、「前立腺炎」、「精索上体炎の後遺症」などがあります。また「勃起射精障害」では、男性性機能障害のひとつで勃起が十分でないために満足な性行為が行えない勃起不全(ED)があります。その他にも「遅漏」や「早漏」などがあります。


(2)精子異常の原因
精子異常の原因として、環境ホルモン(内分泌撹乱化学物質)があげられています。環境ホルモンは生体内でホルモンのような働きをして本当のホルモンの働きを撹乱したり、ホルモンの働きを阻害します。生体の生殖や発育という基本的機能に障害を与えます。1980年頃から新聞やNEWSなどで世界各地の野生生物の環境ホルモンによる生殖異常が数多く報告されています。

85ヒトにおいても精巣が徐々に縮小してきている、または精子が徐々に減少するといった報告がいくつかあります。原因は環境の影響や食生活などの生活習慣等も関連しているとされています。胎児期に母体内で環境ホルモンにさらされることが生殖能を障害するのではないかとする説もあります。
2013年、フランスで精子の減少について詳細に調べられた報告があります。1989年~2005年の17年間に126ヶ所の不妊治療施設から収集したデータを解析。パートナーの女性が両側の卵管が閉鎖しているなど明らかな不妊の原因を持つケースで男性には不妊の原因がなく精子に問題はないと考えられるケースについて時代による変化を調査しました。
56 男性の年齢は18歳~70歳で合計15万4721人の精液所見を対象とし、その中で2万6609人の男性の精液を調査しました。1989年と2005年を比較すると精子濃度は32.2%も低下。35歳の男性における精子濃度は1989年においては7360万/mlであったのに対し、2005年においては4990万/mlという結果でした。また17年間の調査期間において正常形態精子の割合も明らかな低下が認められたのです。運動率には大きな変化は認められませんでした。精子濃度は年間1.9%の割合で減少しているということになります。また、食品添加物やストレスなどの影響で、男性不妊症が増えているという報告もあります。


(3)精子改善
最初の精液検査の結果が悪くても絶望することはありません。精液の状態は採精した時間から検査までの時間が短ければ短い程良いですし、クリニック以外で採精した場合、検査するまでの保存状態も大きく影響します。また、採精する時に一定の禁欲期間の有無によっても変わります。そして仕事などのストレスでも大きく検査結果が変動するのです。検査で問題があった場合、必ず再検査を受けましょう。2~3回の検査結果により精子の状態が判断されます。男性の精子も加齢とともに劣化します。また、ストレス過多な仕事や飲酒過多の方は運動率が低下しやすい傾向にあります。

86乏精子症や直線運動している精子が少ない精子無力症とされた場合、まだチャンスはあります。適度な運動でストレス発散、亜鉛、タウリン、ビタミンC、ビタミンEなどを多く含む食生活に改善しましょう。
そして、トマトジュースが精子改善に有効と報告されています。国際医療福祉大リプロダクションセンターの岩本晃明教授はカゴメ株式会社総合研究所と共同でトマトジュースを使った研究に取り組み、2011年12月に日本生殖医学会で発表しています。抗酸化作用があるリコピンを含む1本190gのトマトジュース(リコピン含有量が30mg)を精液検査の結果が悪かった50歳以下の男性54人を対象に(1)トマトジュースを毎朝1本ずつ飲む。(2)従来のビタミン剤を服用する。(3)何もしない。この3グループに分けて、試験時、6週間、12週間の時点での精液検査などを行いました。結果、トマトジュースを飲んだグループは6週目の時点で、何もしないグループと比べ精子運動率の増加、精巣上体から尿道まで精子が通る道の炎症の程度を示す精液中の白血球数の低下が有意になりました。1ヶ月はしっかりトマトジュースを摂取してから禁欲してタイミング法です。ちょっと不妊治療に心が折れそうな人には朗報かもしれません。


(4)男性不妊症の鍼灸治療
87男性不妊症はストレスや生活習慣が大きく関わります。男性ホルモンのテストステロンはストレスで分泌量が低下します。鍼灸治療により、テストステロンの低下が招いた精子数や精子の運動率の減少、精力減退やEDを引き起こす要因が改善されます。 また、鍼灸治療は気血の流れを改善し、胃腸などの消化器官や生殖器官(精巣)の働きを活発にします。消化器官や生殖器官の働きの改善が精子にも良い影響を及ぼします。
また、東洋医学では精室(睾丸)は「外腎」と言います。男性の生殖機能と「腎」は密接な関係があります。男性不妊症の鍼灸治療では、腎中の精である「腎精」を高めることと、気のひとつである「腎気」の陰陽のバランスを整えることを重視しています。腎経・肝経・衝脈・任脈が大切な治療対象となります。
①腎虚
腎虚の中でも多いのは「腎陰虚」です。中年以降の方で太めの方が腎陰虚になっているのは比較的多いのですが、最近は若い人にも結構多いです。これは生活の不摂生や不規則からくる事が多いでしょう。例えば昼夜逆転の生活をしていますと、肝・腎が不足して「肝腎陰虚」になってきます。また、若い時の生活の不摂生は後々「腎陰不足」という状態になりやすく、腎陰不足になると精機能が低下し「陰虚内熱」と呼ばれる虚熱が精子を殺してしまい、精子数が少なくなってしまいます。また腎陰虚の方は元々、体質的に精子数が少ないです。また、元々体質が虚弱な「腎気不足」があり、過労など続き体力の消耗により腎気(生命力)が消耗して腎虚となる人も多いです。
②沈寒痼冷(ちんかんこれい)
腎気不足が進行し、腎陽不足による命門の火の衰えで虚寒が生じます。冷えた感覚を陰部や腰から下に感じますが、外から温めても全く温もりません。身体の深部から温めるような鍼灸治療が必要です。
③陰虚火旺(いんきょかおう
腎陰を損傷すると反対に陽が高ぶり冷やす力(陰)が落ちて相対的に熱の状態が強くなった状態です。精力剤の乱用や生活の不摂生によって起こります。射精障害や精液に血が混じりやすくなります。
④気滞血瘀(きたいおけつ)
ストレスなどにより肝気鬱結となり、気機の阻滞により血行が瘀滞する病態です。仕事や家庭のストレスにより起こります。射精障害や精神的な不安定感も自覚症状として感じやすくなります。


男性不妊症 鍼灸治療

男性不妊症の鍼灸治療では鍼治療を多用します。熱を取るには鍼が有効です。腎経の原穴である太谿(たいけい)や腰部にある腎兪(じんゆ)、腹部の関元(かんげん)、足の三陰交(さんいんこう)は必須です。これ以外に中極(ちゅうきょく)・足三里(あしさんり)・地機(ちき)・陰陵泉(いんりょうせん)・気海(きかい)などのツボも使いますが全身的な治療が必要です。また、生活習慣の改善が必要な場合が多いです。
            
男性的不妊症の研究報告
『特発性疾患男性的不妊症への鍼療法治療後の精子超微構造の量的な評価』
「Quantitative evaluation of spermatozoa ultrastructure after acupuncture treatment for idiopathic male infertility」Jian Pei, Erwin Strehler, Ulrich Noss, et al.Fertility and Sterility. Vol.84.141-149.july 2005.
88生殖医療専門誌『Fertility and Sterility』に掲載されたドイツの調査結果によると、鍼灸治療を受けることで精子の形態に問題のある男性不妊症に効果があったとの報告である。乏精子症(1ml中に2000万の精子がいない場合)や、精子の運動率が低い場合、精子自体の奇形などで男性不妊症と診断された28名の男性を対象に鍼灸治療を行った結果、健全な精子の増加が確認された。 しかし、未成熟精子等の問題に関して効果は確認できなかった。さらに効果を確認し、そのメカニズムを調べる研究が必要である。

 

Copyright 2007-2016 tenyudou acupuncture clinic allright reserved.