1東洋医学 不妊症の考え方


東洋医学では不妊症のことを不孕(ふよう)といいます。月経や妊娠には気・血、腎・肝・脾、衝脈・任脈が大きく関わります。多くは腎気不足または衝脈・任脈の気血不足です。腎虚・血虚で衝脈・任脈を滋養できないと、腎精を統摂して受胎することができません。また、冷えや痰瘀が衝脈・任脈を阻滞されることで受胎することができません。


気・血・水
東洋医学には気・血・水(津液:しんえき)という考え方があります。特に月経や妊娠には気と血が重要になります。
①気
気(き)とは、最も重要で生命活動の原動力となります。父母からもらった先天の精(せんてんのせい)を「腎」(腎精)に蓄えられて、脾胃で摂取した飲食物から取り出した水穀の精微(すいこくのせいび)により後天の気(こうてんのき)を補充します。気は血を生ずる(気能生血)、気は血を巡らせる(気能行血)などの作用があります。
②血
血(けつ)とは、脾胃で作られた水穀の精微から生成され営気と津液によってできています。血は腎精から補充されることもあり、また、余った血は腎精に戻されることから精血同源=肝腎同源といわれます。津液は水穀の精微から生成され全身へ輸布されます。赤くない潤いのことで体液と考えるとわかりやすいでしょう。血は気の母、気は陽に属し血は陰に属すなども言います。気と血は相互に関係して、切っても切り離せない関係です。
血虚(けっきょ)は血が不足した状態です。月経過多や妊娠・出産は血をたくさん消耗して血虚になるやすいです。症状は顔色が悪い、肌が荒れやすい、髪や爪が傷みやすい、こむら返りをよく起こす、動悸、月経量は少なく、ピンク色の粘膜のようなかたまりが混じるなどです。眠りが浅く夢をよく見る、驚きやすい、不安感など精神的な症状もあらわれやすくなります。血虚を放っておくと子宮内膜が薄くなり経血量が減ったり、月経が短くなるなどの問題が起こりやすくなり、不妊に発展するおそれもあります。

五臓
そして、東洋医学には五臓(肝・心・脾・肺・腎)があります。特に月経や妊娠には「腎・肝・脾」が重要になります。
①腎
腎(じん)には人の成長や発育を促進したり、性行為・妊娠・出産などの生殖機能や、若々しさを維持する生命エネルギーのもととなる物質である精(せい)が蓄えられています。腎精は、五臓六腑に栄養を送り人体の成長、発育を促進させたり、生命活動を維持するのに必要不可欠です。腎は特に生殖機能をつかさどり、妊娠・月経と関係が深いのです。腎が正常であれば、月経周期や排卵周期なども順調であり自然妊娠も可能です。腎精が不足すると身体および生殖器の発育不全、生殖機能の異常や卵子の早期老化などが起こり妊娠しにくくなります。つまり腎精不足が不妊の大きな原因と考えられます。
腎精不足とは先天的な虚弱・大病・慢性病などで腎の精気が不足した病態です。これにより、血が不足して衝脈・任脈を通じて子宮などを養うことが出来ず不妊症となります。月経量が少ない、月経周期が一定しない、無月経、その他一般症状として頭のふらつき、めまい、耳鳴り、腰や膝がだるく無力などの症状があります。腎気が充足してくると、気・血・精も活発になり、衝脈・任脈も活発化して、子宮に血や精が満たされるようになり月経が順調になり妊娠できるようになってきます。
②肝
肝(かん)には疎泄(気の昇降出入・脾胃の運化促進・情志の調節)や蔵血(血の貯蔵と血量の調節)の働きがあります。精神的ストレス→卵巣機能低下→月経異常へと連鎖して、月経不順・無排卵・不妊症などになりやすいのです。その他、イライラ、乳房の張り、痛み、流産などとも関連します。さらにストレスが溜まると「肝気鬱結」という状態になり、気滞から瘀血(おけつ:滞ったドロドロとした血)が生じます。子宮内膜症や子宮筋腫、または不妊症は瘀血による場合が多いです。肝は血と大きく関わります。
③脾
摂取した飲食物は脾(ひ)に入ります。脾は脾臓ではなく消化器と考えてください。本来、脾により飲食物から取り出した水穀の精微から作られる気・血が不足すると、生殖器(子宮・卵巣)に送られているはずのものが不足します。その結果、月経異常や不妊症にもなりやすくなります。

経絡
よく耳にするツボは正式には経穴(けいけつ)といいます。このツボは簡単に言うと駅です。電車にはさまざまな路線がありますが、その路線は経絡(けいらく)です。特に主要な路線を経脈(けいみゃく)といいます。経脈には「十二正経」と呼ばれるものと「奇経八脈」と呼ばれるものがあります。十二正経は中央線や小田急線などの主要路線です。奇経は独自路線を持つ(任脈・督脈)もありますが、湘南新宿ラインのように独自路線を持たずに、さまざまな路線を跨いでいるもの(衝脈など)もあります。常経である正経に対して、奇経は特異な性質を持っています。妊娠には奇経の衝脈と任脈が大きく関わります。
①衝脈
十二正経の気血を調節し、各経脈の気血を総領する要衝であるため衝脈(しょうみゃく)といいます。別称として「十二経の海」または「血海」とも呼ばれています。奇経の衝脈・任脈・督脈はいずれも胞中(子宮)より起こります。ですから衝脈は月経と密接な関係があります。本経に病変が生じると、気逆・哮喘・月経失調・無月経・不正性器出血・乳汁分泌減少・不妊・下腹痛・下肢の痿軟などが現れます。
衝・任・督は「一源三岐」といういい方がなされます。この3本の経脈は、主に生殖機能を調節する作用があります。「衝任を調理する」ことが女性の月経症の主要な治療原則となり、また「任督を温養する」ことは、男性・女性の生殖機能減退を治療する主要な方法となります。
②任脈
任脈(にんみゃく)も胞宮(ほうきゅう:子宮・女子胞・胞臓・子臓・子処・血臓)から起こります。そして、下腹部・腹部・前胸部の正中を上り、のどを循り下顎の正中から下歯齦に終わります。任脈は一身の「陰脈の海」です。足三陰経(足太陰脾経・足厥陰肝経・足少陰腎経)は下腹部で任脈と交会しているため、左右両側の陰経は任脈を通じて互いに関係しあいます。任脈が陰経に対する調節作用を持っているのはこのためであり、任脈は「一身の陰経を総任する」と言われています。生体の陰液(精血・津液)を司っており、任脈は月経・懐胎・出産の調節の機能を持ち「任は胞胎を主る」とも言われます。任は「妊」に通じています。
腎は精を蓄え衝脈・任脈や全身に腎精を供給しています。衝脈・任脈は、血・精・津液などの栄養物質を子宮に運ぶための重要な役目をもち、月経・妊娠・出産などの生殖活動を活発にします。子宮を成長させたり、月経を調節し生殖器の働きを高めます。妊娠するには、まず腎の機能が旺盛で精血が満ちあふれ、衝脈・任脈が通じ、月経が定期的にあれば、男性の精と女性の精が結合し妊娠します。もし、腎の機能が低下すれば、衝脈・任脈の気血が不足して妊娠が困難になり、仮に妊娠しても養胎できません。



弁証論治
中医学の診断治療のシステムを弁証論治といいます。現代医学においては、診断の目的は病名を確定することにありますが、東洋医学の診断目的は、治療方針を決定することにあります。正確な診断をおこなうためには、診察により病人の症候を中医学理論に照らし合わせながら「証」を決定します。証とは診断を行い病態を判別するための「あかし」であり「証拠」です。そして、病態を把握し治療方針を決定します。そのような診断・治療の手順を「弁証論治」といいます。
不妊症は主に気・血および腎・肝・脾の働きの乱れが経絡の流れに変調をきたすと考えられます。鍼灸治療によって気・血、腎・肝・脾、経絡のバランスを整えることで、不妊症の原因を改善します。また、妊娠しにくい冷えの体質改善や身体の本来の機能を正常な状態に戻すことで妊娠しやすい身体にしていきます。
東洋医学からみると、不妊症には大きく「腎虚・肝気鬱結・瘀血・痰湿」の4つのタイプがあります。ご自身がどのタイプに当てはまるか知ることも大事ではないでしょうか。
① 腎虚
腎の機能が低下することを腎虚(じんきょ)といい、簡単に言えば「老化」のことです。腎虚により「先天の気」が弱まり、生殖機能が低下している状態です。女性では卵巣機能不全・黄体機能不全などであり、男性では精子減少症、精力減退などを指します。この腎虚には腎陽虚と腎陰虚があります。
(1) 腎陽虚
正常な体温を保っているのは「陽」のはたらきです。陽が足りない腎陽虚(じんようきょ)では、腎精不足の症状以外に元気がない、寒がりで手足がいつも冷たい、下半身が冷えやすい、顔色が青白い、夜間頻尿、冷えると腰や関節が痛む、寒冷を嫌うなどの症状があります。男性では陽萎(ようい:インポテンツ)、早泄(早漏)があります。女性では月経周期の延長、経血量が少なく、希薄または無月経がみられます。腎陽虚は「冷え体質」があり、冷えにより血管が収縮して血の流れを滞らせるため瘀血に発展しやすのです。冬に首すじが冷えると痛み、ふとんから肩が出ていると肩がこるといったように冷えると途端に調子を崩します。
陽虚の舌は全体的に白く淡い、胖大(はんだい:舌がボテッとして両側に歯の形のギザギザが多い)します。苔は薄く白いです。このタイプの鍼灸不妊治療では冷えを治すことにあります。冷え体質を改善し、子宮・卵巣を温め、自身の本来の排卵周期・月経周期を取り戻すことにあります。
よく使うツボには腎兪(じんゆ:第2・第3腰椎棘突起間の外1寸5分)、関元(かんげん:おへそから指4本分下)、太谿(たいけい:内くるぶしのすぐ後ろ、アキレス腱との間のくぼみ)などです。鍼で補法をしながら、冷えにはお灸を多く用います。
漢方薬では八味地黄丸(はちみじおうがん)、午車腎気丸(ごしゃじんきがん)、温経湯(うんけいとう)などが処方されることが多いでしょう。
そして、生活習慣の改善も必要となってきます。この腎陽虚タイプは、まず冷えを寄せつけない生活を心がけて、血の巡りの悪さを改善していきましょう。適度な運動やウォーキングなどがオススメです。



(2) 腎陰虚
血や津液のように体に必要な潤いを与える「陰」は、体のラジエターの機能でもあります。加齢とともに不足したり機能低下するのが陰虚(じんいんきょ)です。腎精不足とともに、陽気が相対的に余るために虚熱(きょねつ:陰・陽・気・血が不足して生じる発熱)が生じ、女性では胞宮を養えず、また虚火により擾乱されたり、精や血が灼かれるため不妊症となります。腎精不足の症状以外に、肌の乾燥・のどの渇き・盗汗(とうかん:寝汗)・目が乾きやすい・ほてり・のぼせ・五心煩熱(ごしんはんねつ:手掌や足裏のほてり)・首元がほてりやすいといった症状があらわれます。月経周期の短縮、月経量が少ない、経色紅がみられます。
特に汗っかきでなくても皮膚や呼吸から水分が蒸発し、血液ドロドロにつながる場合もあります。若い人でも体質的にうるおいが不足しがちな人もいます。夏に弱く、疲労感がたまっているけど、甘酸っぱい飲み物やフルーツをとると元気が回復するというのも腎陰虚の大きな特徴です。
陰虚の舌は舌質紅(全体的に濃赤色)、舌苔は少~無苔です。舌の表面に裂紋(れつもん:裂け目)があることもあります。脈は虚細数となります。このタイプの鍼灸不妊治療は、まず、腎陰を補うことで体の水の巡りを良くします。よく使うツボには太谿、湧泉(ゆうせん:足の指を曲げたときに足裏にできるくぼみ)があります。また、舌の裏側の静脈にあるツボである金津(きんしん)・玉液(ぎょくえき)は、昔は点滴代わりになったほど陰を生む作用にすぐれたツボです。舌先を舌のつけ根に当て、なめるようにして、ゆっくりと左右に動かします。だんだんと唾液が湧いてくるのを飲み下します。血虚もあれば、三陰交(さんいんこう)や血海(けっかい)のツボも併用します。
漢方専門薬局では定番の六味丸(ろくみがん)の他に、杞菊地黄丸(こぎくじおうがん:六味丸にクコシとキクカを加えた処方)、八仙丸(はっせんがん:六味丸にバクモンドウとゴミシを加えた処方)などもオススメでされるでしょう。
この腎陰虚タイプは炎天下でのスポーツやサウナなど、びっしょり汗をかくようなことは不向きです。オススメは水泳やアクアビクスなどの水中運動です。運動後の水分補給はお忘れなく。
②肝気鬱結
精神的ストレスでイライラしたり、緊張などにより肝気鬱結(かんきうっけつ:肝鬱)して疏泄(そせつ:行き渡らせること)が乱れると気血の流れが悪くなり、胞宮(子宮)が栄養を受けられず不妊症となります。症状はイライラ、胸のつかえ、月経周期が不安定、月経前に胸・乳房・下腹・少腹(下腹の両側)が脹っている痛む(PMSでも多い)、胸脇が脹って苦しい、月経血に血塊が混入、不妊とともに憂うつ、ヒステリック、ため息、ゲップ、便秘がちなどです。
肝鬱の舌質は淡~紅。舌苔は薄白です。脈は弦または弦細となります。また、季肋部から脇腹が膨満して圧迫感があり苦しい状態である胸脇苦満(きょうきょうくまん)がみられる。このタイプの鍼灸不妊治療は、滞っている肝気の疏泄を改善します。よく使うツボには膻中(だんちゅう:乳首と乳首の真ん中で胸骨上)、太衝(たいしょう:足の親指と人さし指の接合部から指3本上)、労宮(ろうきゅう:手を握ったときに中指が当たるところ)、内関(ないかん:手首内側の中央から指横幅3本分上)、足三里(あしさんり:膝の皿の下のくぼみから指4本分下の向うずねの外側)があります。その他、期門(きもん:乳首辺りから下ろした線と肋骨が交わるところ)、陽陵泉(ようりょうせん:膝をたてて腓骨頭の前下際)なども用います。
漢方薬では四逆散(しぎゃくさん)、逍遥散(しょうようさん)、加味逍遥散(かみしょうようさん)、抑肝散陳皮半夏(よくかんさんちんぴはんげ)、小柴胡湯(しょうさいことう)、柴胡桂枝湯(さいこけいしとう)が処方されます。加味逍遥散や逍遥散に四物湯(しもつとう)という補血剤をプラスするという処方もオススメです。
この肝鬱タイプは上手なストレス発散が必要です。適度な運動や散歩で気血の巡りを良くしましょう。元々、気虚がある方はバスタブにつかりましょう。お気に入りの入浴剤を探すつもりで色々試してみましょう。ダラダラと汗をかくほど入浴しないのがポイントです。


③瘀血
瘀血(おけつ)とは鬱滞している血液です。古血(ふるち)ともいいます。今でいうドロドロ血液です。瘀血が生じると体のさまざまな機能に悪影響を及ぼします。陽虚、気虚による血液の推動無力、陰虚・血虚による渋滞、肝鬱気滞による血流阻滞、痰湿による血行阻滞で血瘀を生じ、衝任脈・女子包(子宮)が栄養されず不妊となります。特に女性の子宮・卵巣は瘀血の影響を受けやすいのです。瘀血がたまることにより、排卵障害・月経不順(遅れがち)・生理痛(下腹部が強く刺し込むように痛み。経血は暗紫色で血の塊が混じる)などを起こし、人によっては子宮筋腫・卵巣のう腫・子宮内膜症などの原因にもなります。もちろん、卵巣機能低下などによる不妊症の大きな原因にもなります。
瘀血の舌は瘀斑(おはん:舌に部分的に茶色や青紫紫色の斑点)や特異的に舌下静脈が怒張し青紫色になるのがみられます。腹診では少腹急結(しょうふくきゅうけつ:下腹部がひきつり脹った感じがある)、左右の臍膀に充実した抵抗や圧痛がみられます。
このタイプの鍼灸不妊治療は、滞っている瘀血を改善して血液循環を良くします。よく使うツボには鳩尾(きゅうび:みぞおち)、膈兪(かくゆ:肩甲骨の少し下で背骨から指2本分外側)、関元、血海(けっかい:大腿前内側の膝蓋骨内上角の上2寸)、次髎(じりょう:仙骨上から2番目の凹没部分)、三陰交(さんいんこう:内くるぶしの最も高いところから指幅4本上で脛の際)などがあります。
漢方薬には駆瘀血剤(くおけつざい)があります。代表的な処方に桂枝茯苓丸(けいしぶくりょうがん)、桃核承気湯(とうかくじょうきとう)、温経湯、当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん)、通導散(つうどうさん)、大黄牡丹皮湯(だいおうぼたんぴとう)、芎帰調血飲(きゅうきちょうけついん)などがあります。
油物や甘い物を好んで食べ体重が増加した人などは、より多くの瘀血がたまると考えられます。つまり肥満も不妊の大きな原因になるのです。末梢での血液の流れを阻害し、子宮・卵巣の機能を低下させ、ホルモンのアンバランスを生じさせることになります。もうひとつの瘀血の原因として長期のホルモン治療が考えられます。体に刺激を与えるためにはある程度は必要ですが、長期に行ってしまうと体重が増加し新たな瘀血を作る原因にもなります。不妊治療で重要なのは冷えと瘀血をなくすことです。冷えや瘀血を改善し、妊娠して維持できる母体を作ることが重要です。
この瘀血タイプはウォーキングがオススメです。通勤時間を利用して一駅歩いたり、休憩時間に散歩したりして、できるだけ歩く時間を作ることに心掛けましょう。顔色が悪い、頭痛、肩こりなどに悩まされている人は、上半身の血行を良くするためのストレッチもイイですね。手のひらを下に向け腕を伸ばして上下に動かす運動が効果的です。酒の飲み過ぎ、脂っこいものの摂り過ぎには注意しましょう。
    
④痰湿
痰湿(たんしつ)とは、水分代謝が悪くなっている状態です。停滞した津液は「湿」と呼ばれ、湿が増えて凝集すると「痰」になります。不必要な水分が排泄されず、体内に留まり濁った状態になることで、冷えなどさまざまな体の不調を招くことになります。肥満体質で、汗をかきやすく疲れやすい、色白の肌で湿った感じが強くなります。痰湿の症状は、顔や手足が浮腫む、肥満、太りやすい(水太りなど)、めまい、動悸、吐き気、にきび、吹き出物などがあります。
油っこい食べ物、味の濃いもの、甘いもの、美食などによって脾胃の機能を乱し、水湿が運化されずに痰湿を生じ、その痰湿が下注し衝脈・任脈を阻滞して不妊症を引き起こします。無月経または月経が遅れがち、経血量が少ない、経血の色が薄い、粘るおりものが多い(排卵期以外のおりものが多い)、軟便、生理痛の特徴は生理前~生理中、下腹部が冷えて痛み激痛のこともある、低温期が不安定、多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)や黄体化未破裂卵胞(LUF)などです。
痰湿の舌は白膩苔(はくじたい)という舌苔が白くて厚いのが特徴的です。このタイプの鍼灸不妊治療は、痰湿を除き、その産生を抑えます。よく使うツボには陰陵泉(いんりょうせん)、中脘(ちゅうかん:みぞおちとおへその中間)、豊隆(ほうりゅう:外くるぶしと膝の中間)、太白(たいはく:足の親指の根元にある骨のすぐ後)などがあります。
漢方薬には痰湿を除くものと調経の方剤を合方(2種類の漢方薬を同時に処方)することが多いです。痰湿を除く方剤には平胃散(へいいさん)、五苓散(ごれいさん)、猪苓湯(ちょれいとう)、防已黄耆湯(ぼういおうぎとう)、苓桂朮甘湯(りょうけいじゅつかんとう)、苓姜朮甘湯(りょうきょうじゅつかんとう)、真武湯(しんぶとう)、温胆湯(うんたんとう)、半夏白朮天麻湯(はんげびゃくじゅつてんまとう)などがあります。合方では五積散(ごしゃくさん)+当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん)、六君子湯(りっくんしとう)+当帰芍薬散などがあります。
この痰湿タイプは、湿度の高い梅雨時や夏、低気圧が近づいてきたときなどに体調を崩しやすい傾向があります。また、水分の摂り過ぎは体調を崩す原因になるので、冷たいもの(ビールなどのアルコール類も含む)、甘いもの、味付けの濃いもの、乳製品は控えめにしましょう。体に溜まった余分な水分や老廃物を排泄するには汗をかくのがオススメです。できれば、じわりと汗をかくようなスポーツがよいです。そして、夜はゆっくりお風呂につかり、汗をかくようにしましょう。
   

 

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