お灸の歴史
お灸の起源は古く、二千年以上前に古代中国の北部地方で発祥したとされていますが、それ以前の古代インドやチベットを起源とする説もあります。日本に伝わったのは仏教伝来する6世紀頃とされています。以後、お灸は一般にも広く流布して、民間療法として広く浸透しました。
お灸とは
お灸とは、一般的にモグサを皮膚の上のツボに置いて燃やし、その温熱刺激によって体調を整える治療技術です。お灸をすることで、さまざまな体の不調を改善する効果が期待できます。また、女性に多い冷え性・体質改善・不妊治療などに有効とされています。
原材料はヨモギ
お灸の材料は『モグサ』(艾)です。このモグサは乾燥させた『ヨモギの葉』を精製したものです。ヨモギは日本全国に自生するキク科の多年草です。さまざまな薬効成分(健胃、利尿、解熱、止血など)が含まれており、草餅にして食べたりと日本人にもなじみの深い植物です。
有効成分
お灸に点火すると独特な芳香を発します。ヨモギに含まれる『チネオール』という成分が燃焼したときの香りです。この成分はローズマリーやローリエなどのハーブにも含まれており、さわやかですっきりとした芳香を持つため、リラックス効果があり、緊張した筋肉をほぐし、自律神経のバランスを整える作用が期待できます。この香りによる効果のために、お灸は『元祖アロマ療法』ともいわれる所以です。その他、『タンニン』『テルペン』などの成分が含まれています。タンニンは炎症を抑えて肩こりなどに効果があります。これらの有効成分が身体の上でモグサを燃焼させることで、皮膚から浸透します。つまり、お灸は温熱刺激と有効成分の相互作用で効果があるわけです。
お灸は怖い!?
昔から、いたずらをすると『お灸をすえる』と言います。親指大ほどのお灸をすえたりしている訳ですからたまりません。このようなイメージが定着しているせいか、お灸は『熱い』『怖い』といった印象をもっている方が多いです。そして、お灸の原材料はヨモギですから、植物片が燃えモクモクと煙も出ますし、独特なニオイもあります。タバコとは違いますので、煙を吸い込んだからといってニコチンが含まれている訳ではありませんので安心してください。最近では『お灸女子』という言葉もあり、ジワジワと人気が出てきて見直されているのです。
お灸の種類
お灸にいろいろな種類があり、当院でもいろいろなお灸を使用しています。温灸・台座灸・筒灸・塩灸、直接灸などがあります。温灸・台座灸・筒灸・塩灸は隔物灸という種類で、無痕灸や間接灸とも呼ばれます。皮膚に火傷を起こさないお灸で、モグサと皮膚の間に何かものを置き温熱刺激を生体に与えます。
①温灸
長さ20センチ、太さ1.5センチほどの『棒灸』でホ~ンワカと温めていく気持ちの良い治療法です。熱を身体に足して、虚(足りない)している分を補います。現代人は虚証が非常に多いです。腎虚などによる冷え症や不妊症の方に一押しのオススメ療法です。
②びわの葉エキス灸
『びわの葉エキス灸』はホームメイドの有機枇杷葉のエキスと温灸を組み合わせた心地良い温熱療法です。枇杷葉に含まれる主要な有効成分はアミグダリン、有機酸、ポリフェノールなどがあります。これらが体内に吸収されることで様々な効用をあらわします。代表的な作用には抗ガン作用、免疫活性作用、殺菌作用、血液浄化作用、鎮痛作用などがあります。最も注目されているのがアミグダリンという青酸配糖体です。これはガン細胞の周囲にあるベータグルコシダーゼという酵素に触れると、シアン化合物を出しガン細胞を攻撃します。一方で正常細胞に近づき、その周囲にあるロルターゼという酵素に触れると、安息香酸に変化し免疫力の強い細胞をつくるとされています。この結果、ガンの退縮、末期のガンの痛みが軽減にも有効とされています。
当院のびわの葉エキスはホームメイドなので安心です。びわの葉エキス灸のやり方は、びわの葉エキスをキッチンペーパーなどに滲み込ませ、患部に直接あてます。その上から成分の蒸発を防ぐためにラップなどで覆います。そして、その上に和紙や手ぬぐい、タオルなどを被せ、上から『温灸』していきます。温灸した患部がピンク色に発赤するまでやるのがポイントです。冷え症や月経不順などの婦人科疾患や不妊症などに効果的です。
③台座灸
当院で最も使われているお灸が『台座灸』です。紙製の4ミリほどの台座に円柱状のモグサが固定されています。台座の下がシールになっているので、局面にも横にしても貼れます。モグサに点火して、ツボに貼ります。約5分で燃え尽きます。薄っすらと発赤するように施灸するのがポイントです。途中で熱すぎれば、取っていきます。自宅でお灸をしたいという方には、この台座灸がオススメです。
④筒灸
『筒灸』も紙製の筒状の空間にモグサがあり、下に空気の層があり熱を調整します。下部は糊やシール状のものでツボに固定します。筒灸は台座灸よりも煙が多いですが、ジンワリとホ~ンワカと温めていくように感じます。季節や天気(湿度や気圧)により、お灸の熱さの感じ方が異なります。こちらも熱すぎれば、取っていくので大丈夫です。
⑤直接灸
『直接灸』(透熱灸)はその名の通り、皮膚の上にゴマ粒ほどの大きさの円錐形の1.5~2.0ミリ程のお灸をのせて、専用の線香で火を点けてお灸の熱を体内に浸透させていきます。当院でこれをやるのは『逆子の灸』で足の小指にある『至陰』というツボだけです。ここは角質もあついので火傷の痕が残ることはありません。
当院では火傷を防ぐ『灸点紙』を貼り、その上にゴマ粒~米粒ほどの大きさのお灸をのせて、八分目で消す『八分灸』か、竹筒を使い灸熱を緩和する『深谷灸』が多いです。痕が残るような火傷にはなりません。不妊症では腰仙部に、瘦せ型の女性の肩こりに著効があります。これは知熱灸と呼ばれるもので、初診の患者さまは『程よい熱さが逆に心地いい』とおっしゃいます。お灸は決して熱過ぎたり、怖いということはありません。
⑥塩灸
特殊な灸法には塩灸があります。特製の竹製の容器に塩(当院では沖縄の塩)を敷き、その上に円錐状(大きさ約1.5センチ)のお灸を載せます。ジンワリと温められように感じます。これは下痢や体の水分異常(浮腫や腹水)に使われます。
自宅でお灸
当院では『自宅でお灸してみた~い』という方のために、効果的なツボやツボの位置などをご指導しています。また、お灸の原材料はヨモギですから、ヨモギのアロマ効果もあり、『お灸を始めてから、よく眠れるようになった』という意見も聞かれます。お灸は元祖アロマテラピーです。
体質改善
お灸は長く続けることで体質改善(アレルギー体質や便秘体質など)が可能です。多くの場合、自律神経や内分泌系(ホルモン)が長期間乱れることで、体質異常が引き起こされていることが多いです。長期間にわたり継続されてきた体質を改善するには、お灸により自律神経を調整することで内分泌系が正常化となり体質改善されます。体質改善には根気と時間を要します。その体質が長く続いてきたものであればあるほど、治療期間も長いものとなるとお考えください。初めは治療後すぐに戻ってしまうような症状も、徐々に効果が持続するようになります。場合によっては自宅でお灸を行うことも大変有効です。
お灸の治効作用
お灸をすることで身体は『熱ッ』(微小な火傷)と感じます。これにより異種蛋白と呼ばれる物質が現れます。これによりインターフェロンやサイトカインという免疫関連物質を放出され、抗原抗体反応とよばれる現象が引き起こされ、身体の中で生化学的反応が起こります。これにより白血球が増加→免疫活性→自律神経やホルモンの調整→血流増加などが起こります。自然治癒力のアップなど多くの効果がお灸では期待できます。
増血作用 |
血液像(赤血球、血色素など)の変化、白血球の増加(免疫活性) |
止血作用 |
血液凝固時間の短縮 |
強心作用 |
循環系に対する作用 |
血行促進作用
筋緊張緩和作用 |
局所の施灸により発赤します。血行改善により硬い筋肉の疲労物質が運ばれる「洗い流し効果」
局所循環が改善されることで筋肉の緊張やコリがほぐれる
特定のツボを刺激することで、特定の内臓や器官の血流を促進する |
その他 |
温熱作用、鎮痛作用、新陳代謝促進作用、自律神経調整作用、内分泌調整作用、利尿作用、
殺菌・解毒作用、ツボの特殊作用 |
|