症例報告


※個人情報が特定されないように配慮しております

症例報告①

20××年×月××日 S・Nさん(37)女性
目的
来院前にすでに人工授精4回。体外受精1回しているが、思うような結果に至らず来院。体外受精との併用を希望。
既往歴
特にないが腎機能のやや低下が健康診断で指摘。加療や服薬もない経過観察。やや便秘傾向がある。
生活習慣
会社員でパソコン業務が多忙。ジムで週1回の加圧トレーニング。食事内容や睡眠には特に問題なし。
東洋医学的
診断
歯痕舌。脈やや滑(80/分)。臍動(+)。右の腸骨が下方に開。腰部の脊柱起立筋が過緊張。
治療方針 気血両虚がベースにあり痰湿と肝陽上亢もある。気血を巡らすことを主とする。
治療内容
太極療法プラス三陰交・次髎・中髎・肩井・神庭・帯脈・中封などを選穴。基本的に置鍼とお灸。次髎・中髎は深谷灸法で七壮。三陰交と帯脈は最後に円皮鍼を固定。右腸骨の歪みを徒手調整。近くの漢方専門の医師を紹介し、漢方エキス剤(健康保険)の当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん)が処方された。
経過
・週1回のペースで治療開始。
・3診後の採卵ではグレード以前より上がった。
 初診から1ヶ月後に受精卵(8分割)を移植→後に着床確認。
・妊娠5週目で悪阻の兆候(+)。後に井穴刺絡+内関(粒鍼)。
 しばらくしても胃のむかつきが残ったので胃の六灸。
・妊娠18週頃に切迫流産の危険(+)。自宅安静となり一時休職。
  太極療法+腰部~仙骨部の温灸。加療により入院回避。
 自宅でも台座灸で数箇所お灸してもらう。
・妊娠28週で逆子になったが、逆子の灸で頭位へ復位。
 下腿浮腫が顕著なので「あずき茶」を勧めた。
・計画分娩で出産(約2800g・女の子)。分娩時間約12時間。
・産後(初診から11ヶ月後)に徒手による骨盤調整。産後エクササイズ指導。
・母乳育児(近くの桶谷式の助産院紹介)→良好。
・体重に復帰したが体調も良好。※希望の区立の保育施設にも入所できた。(全診療終了)
考察
37歳の女性の初産における臨床記録である。年齢も加味して鍼灸治療で骨盤腔の気血の流れを改善したことで、ホルモンバランスや子宮環境が改善されスムーズに妊娠したと考えられる。虚証には底上げするような軽い刺激の鍼灸治療で十分効果がある。また患者自身が賢明な方で物事を合理的に考え、余計な情報に振り回されずに前向きな思考であったことも大きな要因であったと推察される。妊娠・出産・産後とトータルにケアできた症例です。  

症例報告②

20××年×月××日 N・Kさん(40)女性
目的
慢性疲労症候群で受診。疲労感の減少に伴い食欲増し体重増により、3ヶ月後から不妊治療に移行。
既往歴 慢性疲労症候群、疲労感が強く不眠などもあり心療内科に通院中。肩こり感、下痢しやすい。
生活習慣
主人が会社をやっており経理などの業務を手伝う。食事内容には特に問題なし。
東洋医学的
診断
歯痕舌。厚苔。脈やや細(76/分)。臍動(+)。左の腸骨が上方転位。腰椎後湾。脊柱起立筋に過緊張あり。
治療方針 気血両虚がベースにあり肝陽上亢もある。気血を巡らすことを主とする。
治療内容 太極療法プラス三陰交・陰陵泉・血海・膏肓・太衝・次髎・中髎・肩井・神庭・神道などを選穴。基本的に置鍼+灸。慢性疲労症候群に対して脳の血流改善のためにスーパーライザーで星状神経ブロック(5分)。腰部は置鍼+赤外線治療器(10分)。不妊治療では次髎・中髎は深谷灸法で七壮。三陰交・陰陵泉は円皮鍼固定した。
経過 ・慢性疲労症候群は治療開始後1ヶ月で抗うつ薬は断薬。
・大学病院で認知行動療法を受けるようになる。
・初診から3ヶ月後には慢性疲労症候群の症状が軽減したので、妊娠希望とのことで鍼灸不妊治療をメインに変更する。
・Kクリニックに通院開始。体外受精と鍼灸の併用を希望。鍼灸不妊治療を開始して、半月後に自然採卵したが分割が遅れ胚移植に到らず。
・定期的に鍼灸不妊治療を受け、治療を開始して3ヶ月後に排卵誘発剤を使い採卵6個、うち2個が受精可能。しかし、うつ状態が再発したので胚移植を順延。
・鍼灸不妊治療を開始して5ヶ月後に胚移植。翌月初旬に着床確認(5W)。
・妊娠13W以降に羊水検査(染色体異常なし)。
・妊娠糖尿病などもなく翌年3月初旬に無事に経膣分娩で出産。
・2年半後の年末に第二子希望で来院(年齢は43歳11ヶ月)。
・Kクリニックに受精卵が1個凍結保存(翌年3月に移植希望)。
 採卵を新たに希望せず凍結保存の受精卵1回の移植を希望。
・定期的に灸をメインに施術。4月にKクリニックを受診。
 6月初旬に移植し着床確認。(この時点で年齢は44歳6ヶ月)
・7月初旬に悪阻の兆候(+)。井穴刺絡+内関(粒鍼)。
 しばらくしても胃のむかつきが残ったので胃の六灸。
・以降、経過は良好で治療終了。その後連絡なし(以降の詳細は不明)
考察 40歳の高齢出産での初産、44歳で第二子妊娠の臨床記録である。それにしても振り返ってみると患者さん自身もよく頑張ってくれたと思う。当初の慢性疲労症候群が3ヶ月で改善したことも心理的に安定した理由であろう。年齢も加味して鍼灸治療で骨盤腔の気血の流れを改善したことでホルモンバランスや卵巣や子宮環境が改善されスムーズに妊娠したと考えられる。腰仙部の施灸を妊娠前~着床後も行ったことで安定した妊娠期間を過ごしたと考えられる。虚証なので心地良い鍼灸治療で十分効果があった。第二子の場合も継続して温灸などで施灸したことが、子宮の血流を良くしワンチャンスで着床に到ったと考えられる。

症例報告③

20××年×月××日  K・Nさん(36)女性
目的 鍼灸による不妊治療で3月中旬に初めて受診した。
既往歴 レディースクリニックを受診しながらタイミング法を数回行っている(子宮内膜は7ミリ、卵胞は平均19~20ミリ)。人工授精にステップアップして、すでに2回行っている。不妊治療の最初に使用されることの多い排卵誘発剤の経口薬「クロミッド」と「セキソビット」を処方され服用した。結果として妊娠には至っていない。基礎体温の高温期が不安定。やや月経周期が短い。冷えの実感はない。葉酸服用。男性側の精子の運動率の低下がある。その他、腰痛、肩こりから来る頭痛がある。
生活習慣 飲食店のフロアのパート。適度な運動習慣なし。食事内容には特に問題なし。
東洋医学的
診断
苺状舌。脈は弦やや細(68/分)。臍動(+)。左の腸骨が上方転位。
盗汗(とうかん:寝汗)と五心煩熱(ごしんはんねつ:手掌や足裏のほてり)がある。
治療方針 気陰両虚がベースにある。気陰を補うことを主とする。
治療内容 太極療法プラス三陰交・陰陵泉・肩井・膏肓(上背部の硬結)、次髎・中髎・YNSA(脳幹)などを選穴。基本的に置鍼+灸。腰部は置鍼+赤外線治療器(10分)。不妊治療では次髎・中髎は深谷灸法で七壮。三陰交・陰陵泉・左帯脈、上背部は円皮鍼固定した。
経過 ・治療開始後にタイミング法を行い、3診目(3週間後)の4月上旬に妊娠検査薬で陽性(+)。
・その後、胎嚢は確認されたが心拍確認ができずに稽留流産(7W)となり自然排出した。
 再度の妊娠に向け、子宮をきれいにするために血海を追加選穴した。上仙は皮内鍼固定。
・10月中旬(15W)には無事に安定期に入りそうなので、経過良好で診療を終了した。
・2週間後(5月下旬)には生理再開。
・6月中旬に生理が来たが生理痛は無かった。
・7月末にタイミング法を行う。基礎体温の高温期が安定してきている。
・8月中旬に着床確認(5W)。重いものや冷えに注意するように指導。
・8月末の来院に軽いつわりを訴える。井穴刺絡(全手指)+内関に円皮鍼固定。
・9月中旬に検診(11W)。軽いつわりも消失。腰仙部を重点的に温灸。
・10月中旬(15W)には無事に安定期に入りそうなので、経過良好で診療を終了した。
考察 36歳で高齢出産に向けての臨床記録である。当院の受診前にタイミング法と人工授精を2回行っているが妊娠には至っていない。治療開始から間もなく着床したが稽留流産となってしまった。週数からみて染色体異常によるものと考えられる。母体側に問題があって起こったのではないとの説明をして納得してもらった。その後、自然排出の良好で、生理再開も速やかであった。妊娠に向けて気陰両虚を補う全身療法を行い、次の周期にはタイミング法で無事に着床に至った。そして、経過も順調で安定期に入った。鍼灸治療で気陰両虚を補うことで卵巣機能や子宮環境が改善されスムーズに妊娠したと考えられる。腰仙部の温灸を着床後も行ったことで安定した経過を辿ったと考えられる。虚証なので心地良い鍼灸治療で十分効果があった。治療開始当初から目に見える形で結果が出ていたので、患者とも良好な信頼関係が構築できたことも心身の安定に寄与したと考えられる。
 

鍼灸不妊治療の研究報告


日本国内での研究報告の一例

①「鍼治療はART難治症例の妊娠率向上に寄与するか?」
明生鍼灸院(木津正義ら)と明治鍼灸大学の共同研究.日本生殖医学会雑誌51(4).P333.2006.
対象 体外受精を5回以上行っても妊娠しなかった不妊症の女性114人。
治療方法 1998年2月~2006年6月に同鍼灸院を訪ねた不妊患者のうち体外受精を5回以上行っても、妊娠しなかった女性に週1~2回のペースで行われ、腹部や足などにある婦人科疾患に効果があるとされるツボを針で刺激した。
結果 約4割にあたる49人が妊娠に至った。49人のうち4人は自然妊娠だった他、30人は治療後1回目の体外受精で妊娠に成功。
見解 ART(体外受精(IVF)や顕微授精(ICSI)のように体外で生殖医療をする技術のこと。生殖医療技術、高度生殖医療、生殖補助医療)における、鍼治療の効果が不妊専門医たちに報告である。欧米ではすでに不妊治療に鍼灸治療の併用が標準化しつつある。約4割の成功率は十分に補助療法として検討されるべきである。


 

②「子宮内膜形状不良患者に高度生殖医療と鍼灸治療を併用した57症例」
明生鍼灸院(鈴木裕明ら)と竹内病院トヨタ不妊センター所長・越知正憲との共同研究.2001.
対象 結婚後5年、不妊専門機関で2年治療しても妊娠しない不妊症患者で、体外受精など高度な生殖医療を3回以上受けても妊娠できず、子宮の内膜が薄いことが原因と推定される57人(平均年齢34.7歳)が対象。
治療方法 本治法と標治法(関元、中極、大赫、血海、三陰交、腎兪、次髎)に対症療法的選穴をした。単刺術で治療頻度・回数 : 週2回で3ヶ月以上(合計21回以上)続けた。
結果 31人の子宮内膜が厚さ6ミリ以上など妊娠への一定基準に改善。うち14人(同33.7歳)が、冷凍保存した自分の胚を移植して妊娠した。この他、不妊の原因が分からず、月経異常や頭痛、肩こりなど健康に問題がないのに感じる体の不調(不定愁訴)がみられる患者24人(同35.2歳)への鍼灸治療でも7人(同36.1歳)が妊娠した。鍼灸治療が子宮の血流を活性化させ内膜の改善に至った可能性があるほか、妊娠より先に不定愁訴が治った例が8割あった。
考察 ホルモン剤を使用しても子宮内膜が厚くならない方に対して鍼灸治療を併用したところ、約6割に子宮内膜の改善がみられました。また、改善された中の約5割が妊娠に至った。これにより子宮内膜形状不良の方に対して、鍼灸治療が有効である。
見解 高度生殖医療の妊娠率は20~30%。これを3回受けた後は妊娠率が著しく下がるとされる。流産を二度経験し、鍼灸治療で内膜が整い結婚6年目の今冬、出産した愛知県内の女性(41)は「排卵誘発剤などの連続使用で体調を崩し、身も心も限界だった。ゆっくり治す東洋医学で気持ちがほぐれた」と振り返る。竹内病院センターの越知所長は「西洋医学を建物の補修に例えるなら、東洋医学は土台の改良工事。むやみに薬を増やすのでなく、自然の治癒力を引き出す東洋医学の知恵が役立てば」という。

 

③「中りょう穴刺鍼が不妊症患者の子宮循環に及ぼす影響」
明生鍼灸院(木津正義ら)と明治鍼灸大学の共同研究.日本生殖医学会雑誌51(4).P333.2006.
目的 すでに難治性不妊症の中でも子宮内膜形状不良と診断された症例に対して鍼灸治療の有効性を示し、生殖器への調整作用を報告してきた。また不妊症患者の中でも特に治療歴が長い難治症例に対して中髎穴刺鍼を行い、その有用性を報告してきた。しかし鍼治療の効果機序について詳細は不明である。今回、中髎穴刺鍼が不妊症患者の子宮・卵巣血流に及ぼす影響について検討した。
対象 竹内病院トヨタ不妊センターを受診し、高度生殖医療(ART)が必要と診断され、その後、胚移植を2回以上行うも妊娠にいたらなかった不妊症患者で本研究に同意した9症例。
治療方法 治療穴は中髎穴。治療方法は腹臥位にて、ステンレス製ディスポ鍼(直径0.3㎜,長さ60㎜)を約60mm刺入した後、徒手的刺激を左右合計10分間行った。鍼治療回数は週1回の治療間隔合計7~15回(平均9.4回)である。血流測定方法はLOGIQ400(横河メディカル)を用い、経膣的にカラードップラー法にて左右子宮動脈、子宮放射状動脈、左右卵巣周囲血管のresistanceindex(RI)を鍼治療期間前後にそれぞれ測定した。血流測定頻度は鍼治療開始前の月経周期3~7日目に一度血流測定を行い、鍼治療開始後2回目の月経周期3~7日目に再度血流測定を行った。
結果 子宮動脈RI値は9症例中、8症例が鍼治療後に低下し、平均0.87→0.80へと有意(P<0.05)に低下した。子宮放射状動脈RI値は半数以上が低下し、平均0.81→0.77へと低下する傾向はあったが有意差は示さなかった。卵巣周囲血管においては、測定可能であった6症例にて検討した。右卵巣周囲血管RI値は平均0.82→0.84、左卵巣周囲血管RI値は1.00→0.71へと大幅に低下する症例もあったが、平均は0.91→0.86となった。左右ともに有意な変化は示さなかった。
鍼治療後の胚移植した8症例中4症例が妊娠した。妊娠率は50%(n=4)であった。
考察 子宮動脈の血管抵抗値は胎児・胎盤循環と関連するといわれている。また、子宮放射状動脈の血管抵抗値は子宮内膜の状態を反映している。今回、子宮動脈RI値は有意に低下し、子宮放射状動脈RI値は半数以上が減少したこのことから、中髎穴刺鍼が子宮の血流改善に関与したことが明らかとなり、我々が今まで報告してきた子宮内膜に対する鍼治療の有効性を裏付けする結果となった。卵巣周囲血管RI値は左右共に有意な変化を示さなかったことより、中髎穴刺鍼が卵巣血流には影響を及ぼしにくく、卵巣血流においてはさらなる検討の必要性が示唆された。
見解 中髎穴への刺鍼後に子宮動脈の約9割が抵抗値減少・子宮放射状動脈も約7割の抵抗値が減少している。血管抵抗値が減少したことは、中髎穴への鍼灸治療により子宮の血流が改善したことを示している。この研究では中髎穴刺鍼が卵巣血流には影響を及ぼしていないが、臨床経験において中髎穴への施灸は卵巣血流に影響を及ぼしている可能性がある。

海外での研究報告の一例

④「鍼治療が補助生殖医療受療者の妊娠率に及ぼす影響」
「Influence of acupuncture on the pregnancy rate in patients who undergo assisted reproduction therapy」Paulus WE, Zhang M, Strehler E, et al. Fertility and Sterility, Volume 77,Issue 4,721-724,2002.
目的 胚移植前後に鍼治療群と非鍼治療群を比較し、鍼治療の妊娠率に対する効果を評価する。
対象 ART受療中の良質な受精卵を持っている160人を、それぞれ鍼治療群と非鍼治療群に各80名に振り分け、その効果を比較検討した。
結果 胚移植後6週目の超音波検査で胎嚢の存在が確認できた割合(妊娠率)は、対照群(非鍼治療群)で26.3%(80人中の21人)であったのに対し、鍼治療群では42.5%(80人中34人)であった(P=0.03)。
結論 鍼治療はART後に妊娠率を向上させるために有用であると考えられる。
見解 ドイツと中国の研究チームがまとめたもので、胚移植前後の鍼治療をすると、妊娠率が大幅に向上するという研究結果である。体外受精の妊娠率は、高くても3割程度とされていた。繰返し治療を受けるカップルの精神的・経済的な負担も問題になっている。妊娠率が向上する詳しい理由は分かっていないが、確実に検証されれば、妊娠率向上に役立つ手法になる可能性があると注目される。

 

⑤「体外受精を受ける女性の妊娠率と出産に対する鍼治療の効果: 予備研究」
「Effects of acupuncture on rates of pregnancy and live birth among women undergoing in vitro fertilisation: systematic review and meta-analysis.」Manheimer E,Zhang G,Udoff L,et al.British Medical Journal(BMJ;英国医師会誌オンライン版), 336(7643):545-549.2008.
目的 全カップルの約10~15%が不妊に悩んでいるとされ、体外で受精させた受精卵を子宮に移植する体外受精(IVF)を選ぶカップルも少なくない。鍼治療がIVFの成功率を高めるという証拠は、これまでにもいくつか示されていた。この研究は米メリーランド大学医学部のEric Manheimer氏らが、IVFを受けた女性1,366人を対象とする7試験について検討した。
対象 IVFを受けた女性1,366人。
方法 胚移植から1日以内に鍼治療を受けた女性と、疑似鍼治療(sham acupuncture)を受けた女性、または鍼治療を受けなかった女性とを比較した。
結果 鍼治療を併用した胚移植は、鍼治療を受けた群の臨床的妊娠は1.65倍高く、継続中の妊娠は1.87倍、生児分娩率は1.91倍高く、鍼治療は妊娠率の高さと関連していた。胚移植前に鍼灸治療を受けることにより、妊娠率と生産率が有意に上がる。しかし、妊娠率がもともと高かった試験では鍼治療による効果は少なく、有意差はみられなかった。体外受精と併用された鍼灸治療は妊娠率を向上させる。
考察 「IVFの補助療法として鍼治療が有用と思われるが、裏付けにはさらに研究を重ねる必要がある」とManheimer氏は述べている。米国鍼医学会(AAMA)元会長のMarshall H. Sager博士は、「今回の結果は驚くには当たらず、鍼治療の利用でIVFの成功率を上げてきた自分自身の経験がこの研究によって裏付けられた。IVFを受ける女性は、鍼治療により成功率を上げることができる」と述べている。

 

⑥「体外受精(IVF)における鍼治療:文献レビューの反映」
「Acupuncture in IVF: A review of current literature.」Nandi A, Shah A, Gudi A, Homburg R.Homburg Homerton Fertility Unit,Homerton University Hospitals NHS Trust, London, UK Journal of Obstetrics & Gynaecology 2014.
要旨 わが国でも晩婚化などにより妊娠年齢が高くなるに従い体外受精が増加している。しかし、生殖医療の技術は進化しているが、体外受精の成功率に大きな変化はなく、特に高齢女性では低いのが現状である。そのため、体外受精の成功率を高める可能性を持つ治療法を受ける人も年々増加しつつある。そのような状況の中、欧米諸国でも多くが体外受精を受けながら鍼治療を受けている場合があり、同時に生殖医療に関わる臨床医が体外受精時に鍼の効果について尋ねられることが増えつつある。国内では見られない例ですが、国外の医療機関では1999年以降、IVF治療中の約1000~5000人を対象とした大規模の臨床研究やシステマティックレビュー等の報告が行われ、幾つかの研究からは体外受精の成功率を上昇させるのに鍼の有益な効果があるとの報告もされている。この研究では実際に大学病院の生殖医療部門の英国の医師が、患者に鍼の効果について入手可能な文献を要約し鍼の効果について検証することを目的として実施されたものです。

その他、米国の生殖医療学会誌『Fertility&Sterility』には、海外の各国での研究報告が掲載されています。

⑦デンマークの研究報告(2006)
273例を研究対象として、非鍼治療群では22%の妊娠、鍼治療群では36%の妊娠率となり、鍼治療群に有意に妊娠率が高くなった。胚移植日に鍼灸治療を行うと体外受精、顕微授精の妊娠率を上昇させる。
⑧ドイツの研究報告(2006)
225例を対象として、体外受精と顕微授精の黄体期に鍼治療を行なった。非鍼治療群では13.8%、鍼治療群では28.4%の妊娠率で、鍼治療群の妊娠率が高くなった。
⑨オーストラリアの研究報告(2006)
体外受精に鍼治療を3回行い、鍼治療群に妊娠率が高くなった例228例を対象に、hMG(排卵誘発剤)注射時、採卵前、採卵直後に鍼治療を行なった。非鍼治療群では23%、鍼治療群では31%の妊娠率で有意差はなかったが、鍼治療群では妊娠率が高くなった。

国内外において、盛んに不妊症での鍼灸治療の有効性を示す研究が多数報告されています。


Copyright 2007-2016 tenyudou acupuncture clinic allright reserved.

  プロフィールページへ レコメンドページへ エッセイページへ リンクページへ プロフィールページへ レコメンドページへ

エッセイページへ リンクページへ ライブ情報へ 問い合わせページへ