疳の虫・小児はり


疳の虫
乳幼児の夜泣き、かんしゃく、ひきつけなどを指す言葉に疳の虫(かんのむし)があります。疳の虫の症状は夜泣き、寝つきが悪い、食欲不振、よく喧嘩する、キーキーと奇声を発する、すぐ驚く、かみつく、怒り易い、不機嫌、不安感、イライラする、物を投げつける、壁や物に頭をぶつける、ヒステリック、頻繁な鼻や喉をならすなどのチック様の症状などです。
西洋医学的には乳幼児の自律神経失調症から起きる神経異常興奮で、理由もなく不機嫌になってじれたり欲求不満を起こすことを指します。自律神経系が不安定になり神経が過敏となった状態で起こります。また、乳幼児期の心身発達のアンバランスから来るさまざまな症状は「小児神経症」ともいわれています。しかし、疳の虫は西洋では病気とされていません。
「疳」とは癇(かん)と同じ意味で、ちょっとした刺激にもすぐ怒る性質、激しやすい気質、神経質などと同じです。東洋医学には五疳(肝疳・心疳・脾疳・肺疳・腎疳)があります。その中でも特に脾疳(ひかん)を指して、乳児の腹部膨満や異常食欲などをいいます。「疳気」が滞り腹部の脹満が見られる場合は疳積(かんしゃく)と呼ばれ慢性化した状態です。
乳幼児の脾胃(消化器)が未成熟な時点で、甘物や味の濃い物を食べさせて脾胃に負担をかけることで起こるとしています。実際に乳幼児が離乳食へと移る約6ヶ月前後の時期から見られます。偏食などの改善が必要になります。
疳の虫の特徴として、白目部分が青い・髪が逆立つ・眉間に青筋があるなどがあげられます。極度な不安、興奮、身体の変化、環境の変化のあった時によくみられます。保育園や幼稚園の入園時、弟や妹が生まれた時、夜更かし、テレビの観せ過ぎも注意です。 
大人が思う以上に乳幼児の脳は未完成で刺激を受けやすいのです。

小児はり
古くから日本では、赤ちゃんの夜泣きは体内にいる疳の虫(かんのむし)という架空の虫が原因だと信じられて来ました。昔から夜泣きには鍼灸治療が活躍して来ました。疳の虫の諸症状には「小児はり」がオススメです。鍼というと痛そうなイメージがあるかもしれませんが、決してそうではありません。小児はりは大人のように鍼を刺すことはありません。先が丸くなった小児の鍼である鍉鍼(ていしん)、小さいローラー型でデコボコしたローラー鍼で皮膚に刺激を与えます。この接触鍼がよく効きます。諸検査で異常が認められない場合は小児はりの対象となります。
『皮膚刺激で効くの!?』と半信半疑の方もいらっしゃることでしょう。“皮膚は第三の脳”とも呼ばれる器官です。皮膚と脳は発生段階では同じで、ともに受精卵の一番外側の外胚葉(がいはいよう)から派生します。言わば仲間です。また、皮膚は身体のバリヤーであり、敏感なセンサーでもあります。ちなみに手の甲の1平方センチに痛点が200個、触点が25個あり、これらへの接触刺激は直接に脳に伝わります。皮膚刺激は脳への刺激であり、脳の活性化につながるのです。
江戸時代からある治療法で、特に関西以西で「疳の虫のはり」などとして親しまれています。「月見はり」といって名月の日に小児はりをする習慣もあります。小児はりは皮膚上をやさしく触れられるような感触でなでていきます。勿論、痛くありません。気持ち良いので寝てしまう子もいます。自律神経を整え免疫力や自然治癒力を高め、急激に発達する脳や体と心のバランスをとり健康な心身を維持します。
夜泣き、寝つきが悪いなどの疳の虫の症状以外に、突然キャーキャーと叫ぶ場合や小児のひきつけでの驚風症(きょうふうしょう)、風邪をひきやすい、よく熱を出す、夜尿症(おねしょ)、喘息、アトピー性皮膚炎、鼻炎、歯ぎしり、目を開けたまま眠るようなものにも効果があります。適応は生後6ヶ月~小学生までが主な対象です。成人でも敏感体質や高齢の方にもオススメです。
小児はりを数日続けることで疳の虫は治まってきます。一度は無くなっても数ヶ月で再発することがあります。再度、小児はりを行うことで多くが消失します。
当院では1回施術した後は、小児はりの簡便なやり方と要点をご指導して、ご家庭でやってもらいます。効果的ですが、実に簡単でどの親御さんでも行なえます。毎日、就寝前に小児はりを5分続けるだけで脳も学習し、夜泣き・疳の虫・夜尿症が格段に減っていきます。
小児はりは鍼灸治療の発想からうまれたスキンタッチ法でもあります。スキンタッチは最大の安心感を得るし与えられます。言葉を介さないコミュニケーションが、そこにはあるのです。老人介護施設でも犬猫などが大活躍する、アニマルセラピーが、最晩年の方々のココロを癒しています。
夜泣き・疳の虫・子どもの慢性疾患には小児はりが効果的です。杉並区在住の方は、当院で「子育て応援券」が使えますので、ご希望の方はお問い合わせください。

疳の虫の漢方薬
疳の虫は日本では古くから治療を要するものとされて来た経緯があります。疳の虫・夜泣きといえばあの“宇津救命丸”はおだやかな作用の生薬が徐々に作用し高ぶった症状をやわらげ体質を強くし体調を整える小児五疳薬です。400年も昔から夜泣きに効く薬として乳幼児に飲まれてきました。ちなみに宇津救命丸は漢方薬ではありません。睡眠薬でもありません。
①甘麦大棗湯(かんばくだいそうとう)
夜泣きやひきつけを治す漢方薬です。漢方薬は苦いというイメージでしょうが、これは甘いので飲みやすいです。身体の興奮状態をしずめる働きがあり、体力がなく虚弱で腹直筋が緊張している場合に適します。一般的に子供もしくは女性に用いられます。
②柴胡加竜骨牡蠣湯(さいこかりゅうこつぼれいとう)
疳の虫に使いますが、他に神経不安、不眠、神経衰弱症、ヒステリーにも用いられます。
③桂枝加竜骨牡蠣湯(けいしかりゅうこつぼれいとう)
体質の虚弱な人で疲れやすく興奮しやすい人向きです。神経質、不眠症、小児夜泣き、小児夜尿症、眼精疲労に用いられます。
④抑肝散(よくかんさん)
虚弱な体質で神経が高ぶる人向きです。神経症、不眠症、小児夜泣き、小児の疳の虫に用いられます。
⑤小建中湯(しょうけんちゅうとう)
体質の虚弱な人で疲れやすく、血色不良、腹痛や手足のほてりor冷え、頻尿or多尿などに伴う慢性胃炎、神経質、小児夜泣き、小児夜尿症に用いられます。

ベビーマッサージ
ベビーマッサージは誕生後にタッチケアを通じたスキンシップであり、コミュニケーション方法のひとつです。赤ちゃんにとって母親の手は“魔法の手”です。 温かい母親に触れられるだけで心が安心して、愛されている幸福感に満たされます。これを行うことで乳児は父母や家族との絆を実感し、心と身体の様々発育を促すことにもつながっていきます。そして、母親にとってもベビーマッサージを行うことで、赤ちゃんと穏やかな時間を過ごすことができます。
赤ちゃんの皮膚はとても薄いので、ベビーマッサージは生後2~3ケ月から始めることをオススメします。赤ちゃんの発達に応じた力加減でマッサージを行いましょう。優しく撫でるだけで十分な皮膚刺激になります。
ベビーマッサージは赤ちゃんの肌を優しく撫でます。肌を撫でてあげることで皮膚が刺激され血行が促進さます。また、マッサージによる適度な圧力は、赤ちゃんの筋肉の発達を促します。赤ちゃんは“幸福ホルモン”といわれる「エンドルフィン」が分泌されています。エンドルフィンの分泌は、赤ちゃんの全身に幸福感をもたらします。マッサージでリラックス効果が高まった赤ちゃんはよく眠ることができるので、夜泣きでお悩みの母親にもベビーマッサージはオススメです。
赤ちゃんと肌と肌で触れ合うことで、母親にも「オキシトシン」という“愛情ホルモン”が分泌されます。オキシトシンには情緒を安定させる効果があるので、ベビーマッサージを行うことでお母さんの日頃のストレスも緩和されます。
マッサージを行う時は、刺激の少ない100%植物性のオイルを使いましょう。肌のすべりを良くし保湿効果もあります。また、赤ちゃんの肌はとてもデリケートなので、寝かせる時に使うタオルは、綿でできた清潔で柔らかい物にしましょう。ベビーマッサージはなるべく静かな場所で行うことで、リラックス効果が上がります。ベビーマッサージは赤ちゃんを裸にして行うので、部屋の温度をあらかじめ25度くらいにしておきます。敏感な赤ちゃんが快適に過ごせる空間を作りましょう。
ベビーマッサージの手順は、①赤ちゃんの右足を両手でつかむようにして、左手、右手の順に太腿から足先に向かってなでおろします。2~3回繰り返し左足も同様に行います。②足の側面を両手で挟み、左右に2~3回振って足首をほぐします。2~3回やって反対側も同様にやるのは以降も同じです。③下から片方のおしりを軽く持ち上げます。内側から外側に向をかって円を描くようにマッサージします。④太腿を持ち、手を太腿の裏に返したあと足首までゆっくり滑らせます。足首を持って両足を持ち上げた後、ゆっくり下ろします。首が据わっていたら、足を軽くゆすっても良いでしょう。⑤今度は手掌をお腹の上に置き、2~3回大きくゆっくりと時計回りの円を描きます。⑥手首を持って両手を伸ばしたり曲げたりします。リズムを付けて行いましょう。⑦首の下から肩まで2~3回ほどさすります。そして、肩から手の先までをひとつの流れでやさしくなでさすり手を離します。⑧今度は赤ちゃんをうつぶせにし、首の付け根からお尻に向かって、両手掌で背中全体を2~3回なでさすります。腰から背中、そして手先までをなでさすりリンパの流れを良くします。⑨手首から肩、お尻、足首へと長いワンストロークで体全体をなでおろし終了です。
ベビーマッサージの注意点があります。赤ちゃんのお肌はとてもデリケートなので、ベビーマッサージを行う前に石鹸などで良く手を洗い、指輪などの貴金属もはずしましょう。また、満腹時や空腹時にマッサージでうつぶせになったり、お腹のあたりを撫でられたりすると、気分が悪くなることがあります。マッサージは授乳後や食事をして1~2時間を過ぎてから行いましょう。さらに、ベビーマッサージを行うと、赤ちゃんは新陳代謝が上がります。終わった後は母乳やミルク、白湯などを与えましょう。
自身のお子さんにベビーマッサージを行うのは問題ありません。しかし、第三者の赤ちゃんにベビーマッサージをする業務は、あん摩師・指圧師・マッサージ師の国家資格が必要です。育児経験のある方が安易に無資格でベビーマッサージとうたって、第三者の乳幼児に施術し金銭の授受がある場合も法律に抵触する可能性があります。ご注意ください

ラビングタッチ
乳幼児の発達には「共感」に基づく母子の信頼関係が重要です。相手の感情を理解し自分も同じように感じるのです。乳幼児の「愛着」は安全の確保が保証され、信頼感や安心感が絆となり共感性を獲得していきます。そして、子供の共感性には他者の行動を観察することを通して学習する「モデリング」が重要です。モデリングとは、何かしらの対象物を見本(モデル)に、そのものの動作や行動を見て、同じような動作や行動をすることです。子供の成長過程では、このモデリングにより学習・成長するとされています。
言葉で伝わるのは約20%で、残りの80%は非言語的な養育者の態度や雰囲気という曖昧なものをモデリングします。“子供は親の背中を見て育つ”はこういうことです。だからといって過保護・過干渉は自律性の獲得に障害を残し、思春期のアイデンティティ(自我同一性)の獲得に影響を与え、将来、その子の発達に問題を残す場合もあります。まずは抱っこや授乳などのラビングタッチで肌の温もりを互いに感じあうことが母子ともに大切な第一歩です。
近年、若者のコミュニケーション能力の低下が指摘されています。もしかすると、粉ミルク世代で乳幼児期の授乳や抱っこ、ラビングタッチなど触れ合うことが少なかったのでしょうか。余り育児にのめり込み過ぎない方が良い子に育つというのが、昨今の育児法の流れです。3歳までは十分に甘やかして、その間も程ほど手抜きで問題ありません。完璧でなくて良いのです

ハイハイ 体幹トレーニング
近年の乳幼児は昔に比べ首の座る時期や立つ時期などが早くなっています。そして歩行し始める時期も早くなってきています。しかし、手に何かを持っている訳でもないのに、手も着かずにいきなり顔や頭を打つような転倒が多いです。親御さんが傍にいても転倒した時にとっさに手が出ず、額を打ったり自分の身を守ることができな子供が多いです。そう感じている親御さんも多いと思います。
標準的な歩行開始年齢は14ヶ月です。1歳の誕生日はつかまり立ちくらいが普通です。しかし、幼い我が子に早くヨチヨチ歩きして欲しいでしょうし、それが良いと思いがちです。
乳幼児の転倒事故の原因として、四つん這い運動であるハイハイの時期が短かったことから起こると考えられています。
歩行可能な乳幼児の腕力は30年前と比較しての40%も減少しています。ハイハイをする期間が短いと腕の筋肉がつきにくいのです。そして、乳幼児のハイハイを見ていると、まず行きたい方向に手が出ます。前に進むなら前に横なら横と言うように身体のバランスをとっています。これは体勢が崩れても手がとっさに出る練習です。ハイハイは体幹部を保ちながら手も足も動かす連動性を養っています。
最近では体幹トレーニングやインナマッスルトレーニングが脚光を浴びています。オリンピック選手やプロスポーツ選手も取り入れています。姿勢維持する体幹部を鍛えることで、基礎代謝のアップや認知症の予防にも良いことが解っています。乳幼児もハイハイにより立ちあがって歩行に必要な筋肉を鍛えているのです。全身のいろんな部位を使うと運動的発達だけではなく、脳や神経の発達も促してくれる良い刺激となります。
ハイハイをすることで自分の身体の大きさを自然と理解し、バランス感覚を養い反射神経もよくなります。そして股関節を強化する上でもハイハイは良い効果をもたらします。ハイハイは体幹トレーニングやインナマッスルトレーニングです。転倒しにくい筋力とバランスを獲得するために必要です。ハイハイする時期を大切にしましょう。たくさんハイハイさせてほめてあげてください。  
CMでも除菌・殺菌・消臭の商品が多いです。床をハイハイしてダニや細菌など衛生面が気になるという方も多いでしょう。洗剤は嫌という方はアロマオイルのラベンダー・ローズマリー・ティートリー・パルマローザなどを、水を張ったバケツにオイルを数滴入れて雑巾がけしましょう。消毒・殺菌の効果があり、自然の優しい香りにつつまれ、乳幼児の身体にも害がありませんし安心して使えます。


 

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